2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K05071
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山口 渡 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (30292775)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保磁力 / 磁気異方性 / 異方性磁界 / 結晶場 / コーティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、磁石材料Sm2Fe17N3の保磁力がその巨大な磁気異方性に釣り合わないほど低い原因を、独自の仮設の検証を通して解明することである。令和2年度は仮説の検証に取り組んだ。 仮説とは、結晶粒表面における結晶格子の断絶により、磁気異方性を担うSm 4f電子を取り巻く結晶場が大きく乱れ、Smの強い磁気異方性が失われた結果、粒子表面全体が磁化反転の核生成サイトになっているというものである。この仮説を検証するために、以下2つのアプローチを取った。①表面上のSm原子が結晶内部と類似の結晶場を感じるように設計された特殊な非磁性材料で粒子をコーティングし、実際に保磁力が上昇することを確かめる。②設計されたコーティング材料とSm2Fe17N3との界面において、Smの局所的な磁気異方性が強化されることを、第一原理計算により確かめる。 ①については、Sm2Fe17N3のFeを他の遷移金属で置き換えた非磁性の金属間化合物を被覆、熱処理を施した結果、保磁力が40%以上上昇することを確認した。従来報告のある被覆材料において見られるように、保磁力と引き換えに著しい磁化低下を引き起こすなどの副作用が見られない点も仮説と整合している。②については、設計したコーティング材料自体が非磁性であること、その材料中におけるSm周りの結晶場がSm2Fe17N3と同じ対称性であること等を確認した。コーティング材とSm2Fe17N3とのヘテロ界面モデルについては現在計算を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究実施計画において、1年目の令和2年度は主に仮説の検証を行うとし、またその検証は、仮説を逆に用いて措置を講じ(=コーティング材料を設計し)、その有効性を確認することをもって行うと明記している。実際に設計した材料のコーティングによって大幅な特性改善を実験的に確認したほか、第一原理計算によってもその解釈の妥当性を裏付ける結果を得ていることから、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
有効性を確認したコーティング材料について、実験条件の最適化による効果の最大化を図るとともに、組成の異なる他のコーティング材の検討などを進める。また第一原理計算によってそれらを理論的にサポートする。
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Causes of Carryover |
(理由)物品の購入にあたり、想定額よりも契約額が安くなったため。 (使用計画)原材料の購入費用に充てる。
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