2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K05078
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中本 有紀 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 特任准教授(常勤) (90379313)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水素 / 高圧力 / 金属化 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
最もシンプルな元素である水素は450万気圧(450 GPa)の超高圧力下で金属化し、さらに室温超伝導を示すとの理論予測があるが、圧力が高く実験的に困難であることから実証には至っていない。これまでに我々が行ってきた超伝導研究からアルカリ土類金属のカルシウムが200 GPaを超える高い圧力下で元素の中で最も高いTcを示すことを報告してきた。また本課題「超高圧力下の水素の金属化および超伝導研究」の実験を遂行するに必要な圧力発生技術開発として、400 GPaを超える超高圧発生に成功した。開発したトロイダル型ダイヤモンドアンビルセルを用いることで、最終のターゲットとして水素について400 GPaを超えた未踏の超高密度生成とその物性測定に挑戦する。 ①超高圧条件下での水素の結晶構造転移の検証。②超高圧下での電気伝導度測定により水素の金属転移現象および室温超伝導の実験的検証。これら2点を主要な目的とし、クリーンなエネルギーを目指した常温常圧下の超伝導体の材料設計に展開したい。 400 GPaを超える超高圧下で電気抵抗測定を可能にするための条件出しとして、数μmサイズの試料に電極や絶縁層などの配置を試みた。 ①アンビルキュレット面のイオンエッチング、タングステンコーティングなど水素の侵入を防ぐための表面処理 ②絶縁材料(CaSO4, cBN,Al2O3など)の選定 や絶縁層厚みや形状の最適化 ③蒸着電極のほか、電気伝導性の高いボロンドープドダイヤモンドなど電極作製法の決定 ④水素封入法について検討トロイダル型アンビルへの電極の挿入、そして水素封入は初めての試みであったが、ラマン測定から水素の封入に成功したことが明らかになった。しかしながら水素の圧縮率が高いことから試料穴や電極が大きく変形するなどして電気抵抗測定はできていない。また封入後の加圧に伴う圧力発生装置の問題点などを明らかにしその改良に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高圧下での水素の電気抵抗には以下のような難しい問題点が考えられていた。 アンビルのキュレット表面上のマイクロクラックに水素が侵入しアンビルを破壊する。水素は圧縮率が大きく封入の際に電極や絶縁層が崩れ易い。複雑なトロイダル形状のため電極が断線するリスクが高い。これらを改善するよう条件の最適化を行ってきた。しかしながら水素封入後、加圧時に圧力発生装置であるダイヤモンドアンビルセルに新たな問題点が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
トロイダル型アンビルへの電極の挿入および水素封入を可能にはしたが、試料である水素の圧縮率が大きいことから、試料周辺の電極や絶縁層、試料穴が大きな変形が電気抵抗測定を困難にしている。概ね改善はしたが引き続き水素の高圧セルへの封入条件の更なる最適化、高圧発生装置の改良を行う。レジスタンスブリッジ測定用端子を数μmほどの試料まで挿入し電気抵抗測定用システムでSPring-8 放射光のビームラインBL10XUで冷凍機を用いた幅広い温度・圧力領域でのX線回折と電気抵抗の同時測定を行なうことを可能にする。
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Causes of Carryover |
実験遂行に必要な高圧発生装置改良において、納期が遅れているため次年度に持ち越しする。
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