2020 Fiscal Year Research-status Report
酸化物ガラス融液の粘性流動の微視的機構の解明とその制御
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20K05089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 雅弘 京都大学, 工学研究科, 助教 (60704757)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ガラス / 粘度 / 化学反応 / 第一原理計算 / 古典分子動力学計算 / 粘性流動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アルカリシリケート融液における粘度のアルカリ種依存性について、NaおよびK間での粘度の大小関係(NaよりもKの方が粘度が高い)を古典分子動力学で再現することに成功し、その絶対値もオーダーレベル以上で一致した。また、その大小関係は融液中の網目骨格の切断反応速度と一致し、Kの方が切断反応が起こりにくいという結果となった。さらに、反応の遷移状態はSiO5の五配位構造となっており、有機化学におけるSN2反応に類似した反応により骨格の切断と生成が起こることがわかった。これにより、網目骨格の切断反応速度の大小と粘度の大小が関係することを定性的に示した。さらに第一原理計算を用いて、遷移状態の活性化エネルギーを比較したところKのほうがNaよりも活性化エネルギーが高い結果となり、化学反応回数と一致する結果となった。これにより、これまでガラス関連の文献等では「Kを含む系よりもNaを含む系の方が、網目骨格中のSi-O結合が弱くなる」との表現がなされてきたが、これを「Kを含む系よりもNaを含む系の方が、反応遷移状態が安定化しており、粘度が下がる」という表現に書き換えられると考えられる。このような化学反応という微視的な観点での知見は、各元素が粘度という物性にどのように影響を及ぼしているかを理解することにつながり、それを直観的に制御することにつながる。ひいては今後のガラスの組成開発につながり、産業応用に貢献できる結果と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
古典分子動力学計算においては粘度が実験値と定量的に一致したこと、およびNaとKの粘度の大小関係を化学反応回数の観点から理解できたことが明確な進展であり、ガラス融液の粘性流動の発現機構をより微視的に理解できるようになった。第一原理計算においては定性的ながらも、古典分子動力学計算の計算結果を説明できる結果が得られており、今後より詳細な解析が必要になるものの順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
第一原理計算の計算精度をkメッシュを細かくとることで上げていき、さらに計算の信頼性を上げる。また、関連する重要な現象として、粘性流動の混合アルカリ効果が挙げられ、これを同様の手法で追っていくことで、ガラス融液分野の重要な未解明問題が解決できると考えている。
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