2022 Fiscal Year Research-status Report
酸化物ガラス融液の粘性流動の微視的機構の解明とその制御
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20K05089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 雅弘 京都大学, 工学研究科, 助教 (60704757)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ガラス / 粘度 / 酸化物 / ケイ酸塩 / 化学反応 / 混合アルカリ効果 / 配置エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に、アルカリシリケート融液における粘度のアルカリ種依存性について、Na2O・2SiO2融液よりもK2O・2SiO2融液の方が粘度が高い理由が、融液中で起こる結合切断の化学反応の活性化エネルギーの大小で説明できることが明らかになった。 本年度はこの知見を、ガラス科学における未解明現象である粘度の混合アルカリ効果に適応した。結果として、Na2O・2SiO2融液とK2O・2SiO2融液の粘度の値から線形的に推測されるよりも、混合アルカリガラス融液における値が下回る計算結果が得られ、粘度の混合アルカリ効果を再現できた。さらに、Si-O結合生存率とSi-O再結合率においても混合アルカリ効果に対応する非線形性(線形内挿と混合系の値がずれること)が得られた。 次に独自の解析コードを開発し、450粒子系での解析により得られた、反応中間体である5配位状態Si生成時と反応前の系のエネルギー差ΔEと、置換反応における基質SiがQ4の反応では相関係数0.737, Q3では0.649の正の相関となり、5配位Siとそれを補償するアルカリの距離が大きいほど反応にエネルギーが必要であることが示唆された。また、基質の最近接を取りうるアルカリ種の割合は、アルカリ種の組成比よりもNaに偏っていたが、これは混合アルカリガラス中でNaのみの系に近い環境が反応箇所の周辺で生じやすいことを示している。 以上のことから、Si-O結合交換反応が粘度の組成依存性に影響を与え、基質とその周辺のアルカリの環境が反応中間体の安定性に寄与していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未解明かつ応用上も重要な現象である粘度の混合アルカリ効果を部分的に説明できる微視的知見が得られたから。
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Strategy for Future Research Activity |
粘度の混合アルカリ効果は低温ほど顕著に発現することが実験的にわかっている。これまで1400℃におけるシミュレーションを行って、現象発現機構の解明と解析方法の確立を行ってきた。これは、低温ほど粘度算出におけるせん断応力の緩和時間が長くなり計算コストが増大するためである。現在では、計算リソースを集中させる段階に入ったと言える。よって、これまでと同じアプローチを1200℃の融液に適用して、確実かつインパクトのある結果を得る。
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Causes of Carryover |
現象の定性的把握および解析方法の確立に終始し、低温の粘度域での計算や混合アルカリ系の粘度測定まで進まなかったためである。本年度は状況が整ったため、これらに使用する。
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Research Products
(1 results)