2020 Fiscal Year Research-status Report
六方晶マンガン酸化物をベースとした層状酸化物の酸素貯蔵機能と結晶構造学的研究
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20K05092
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石橋 広記 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70285310)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 層状酸化物 / 結晶構造解析 / 放射光粉末回折 / 粉末中性子回折 / 酸素貯蔵材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
5配位を有する層状化合物である六方晶マンガン酸化物RMnO3(R = Y, Ho, Er, Tm, Yb, Lu)、およびそのMnの一部をTiで置換したR(Mn,Ti)O3+δは、温度や酸素濃度の変化により酸素を吸収・放出するという現象が最近報告され、酸素貯蔵材料として期待されている。本研究では、これらの現象を結晶構造の立場から系統的に調べることにより、そのメカニズムの解明を目指す。具体的には、放射光およびパルス中性子を用いた回折実験、全散乱法やXAFS測定により、平均構造および局所構造を決定する。これらの結果を基に、酸素吸収・放出時における過剰酸素の位置や配位数の変化と、RやMnイオンの原子位置のシフトとの相関を系統的に調べることにより、酸素吸収・放出の現象の起源を明らかにすることを目的とする。 本年度は、主にRMnO3のTi置換体R(Mn1-xTix)O3+x/2について、RやTiの置換量xを変えた試料を空気中での固相反応により作製し、X線回折法により相図の決定を行った。その結果、R = Er~Luについてはxが約0.2以下においてRMnO3と同様の六方晶系(空間群P63cm)の単相が得られた。一方、R = Hoについては、xが0.1以下では六方晶系の単相、0.2~0.35では菱面体晶系の単相が得られ、この相は六方晶系の相の約3倍のc軸の長さを有することがわかった。この相の放射光粉末回折パターンから消滅則を調べ、さらに走査型透過電子顕微鏡像の結果との併用により、菱面体晶系の空間群がR3cであることを決定した。さらに、Rietveld解析により、この菱面体晶の相は、六方晶のHoMnO3と同様にHo-O層と(Mn,Ti)-O層がc軸に沿って積層した構造を有するが、HoやMnイオンの原子位置が、六方晶のものと異なる特徴的なシフトを示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、まずは六方晶マンガン酸化物RMnO3(R = Y, Ho, Er, Tm, Yb, Lu)のTi置換体R(Mn1-xTix)O3+x/2について、Rの種類やTiの置換量xに対する相図を決定することが重要である。本年度は空気中における固相反応により試料の作製を行い、X線回折により相の同定を行うことにより、予定通り相図の決定を行うことができた。さらに、R = Hoについて、Tiの置換量が特定の範囲において新規相である菱面体晶系の単相を得られることを明らかにし、放射光粉末回折法と精密構造解析によりその結晶構造を明らかにすることができた。また、現在、作製した試料について、酸素濃度を変化させて昇温することにより酸素の吸収・放出を行い、その際の熱重量分析および結晶構造の変化についての実験を進めている。このことから、研究計画はおおむね当初の計画通り進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初予定していたとおり、作製した試料の酸素吸収時および放出時において、放射光粉末回折、パルス中性子回折実験および精密構造解析を行うことにより、過剰酸素を含めた平均構造を決定する。さらに、全散乱法およびXAFSによりR, (Mn,Ti)周りの局所構造やMnの価数の決定を行っていく。また、必要に応じて、酸素の吸収・放出に伴う結晶構造変化の過程を追うために、回折実験においてその場測定を行う。これらの結果に基づいて、本研究の目標である酸素吸収・放出のメカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度はおおむね当初の計画どおり進展したが、参加を予定していた国際会議が翌年度に延期になるなど、本年度に予定していた出張がなくなったため、一部繰り越した。次年度は消耗品(酸素吸収・放出実験のために必要な物品、回折実験用の消耗品など)や、旅費(本年度予定していた学会や研究打ち合わせ、学外での実験)に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)