2020 Fiscal Year Research-status Report
Preparation of lithium-alloyable metalloid nanoparticles/porous carbon spheres as anode materials
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20K05094
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
太田 道也 群馬工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (40168951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱硬化性樹脂小球体 / 膨潤多孔質炭素 / 有機ケイ素化合物 / メソ孔 / ケイ素ナノ粒子 / Si-Np |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)研究の具体的内容:令和2年度の目的は、(1)熱硬化性樹脂小球体(RMS)から作製した炭素小球体を混酸処理と急速加熱処理によって膨張炭素粉末を調製することと、(2)有機シランを膨張炭素粉末に吸着させて加熱処理することでSiナノ粒子/多孔質炭素粉末を作製することである。(i)炭素小球体の調製では、半金属系ナノ粒子の担持用細孔が必要なことからRMSを用いた膨張炭素の調製条件を検討した。その結果、RMSを500 ℃で加熱処理して炭素前駆体小球体を調製したのち、混酸浴中約80 ℃で 12 時間の還流処理後、1000 ℃ で急速加熱処理することで膨張多孔質炭素が得られた。この多孔質炭素は電子顕微鏡観察結果からスポンジ状の膨潤多孔体であることがわかった。窒素ガス吸着測定からは2 nm と30 nm付近に極大を持つ多孔質炭素であることがわかった。(ii)Siナノ粒子/多孔質炭素粉末の調製については多孔質炭素に有機ケイ素化合物を吸着させる条件と、その熱分解によるケイ素単体ナノ粒子(Si-Np)の調製条件を検討した。その結果、ヘキサフェニルジシランを使用した際に透過型電子顕微鏡で多孔質炭素の細孔内に20 nm 前後のSiナノ粒子の生成が観察された。X線分光法ではSiと周辺の炭素以外の元素はほぼ検出されなかった。多孔質炭素内でSiは4 wt%程度が確認された。(2)意義と重要性等:一般に多孔質炭素の細孔制御は困難であるが、本方法では樹脂小球体の膨潤炭素化処理によって、メソ孔由来の細孔の発達した多孔質炭素が得られる条件を絞ることができた。また、Si粒子を負極とすると充放電中にSiが細粉化する等の問題点が改善できない。本方法を用いるとメソ孔内外で粒径が20 nm 前後のSi-Npを生成することができたが、Si-Npの含有量が4 %未満であることからで含有量の向上が課題として残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、一般に多孔質炭素の細孔制御は困難であるが、本研究の手法によって熱硬化性樹脂小球体を一度炭素前駆体生成温度にまで加熱処理した後に混酸で処理し、かつ急速加熱処理で膨張化処理した炭素は、2 nm と30 nmに極大を示す細孔径分布曲線を示すことがわかった。このことから炭素前駆体生成後の膨張処理法がメソ孔より大きな細孔径を有する多孔質炭素の調製法としては有効であることがわかったが、実際には黒鉛のようなアコーディオン型の膨張ではなく、スポンジ状に膨潤した多孔質構造であることがわかった。電池負極材としての電気伝導性の確保と必要最低限の細孔構造という考えからは、膨潤構造は電気伝導性の低下の原因となり、また、電極表面に形成される不働態被膜と呼ばれるSEIの生成が大きくなって性能低下につながることが懸念される。そこで、今後この膨潤構造の改善が必要と考えられる。また、半金属系ナノ粒子としては細孔径内前後に吸着させた有機ケイ素化合物を加熱処理することで20 nm前後の粒径から成るケイ素ナノ粒子(Si-Np)を調製することができた。しかし、この際に、Si-Npの含有量は4%程度に過ぎず、含有量を制御できることが電池としての容量や急速充電に向けた目的に沿うことから有機ケイ素化合物の吸着量を増やす工夫が必要である。令和2年度は新型コロナウィルス禍において、研究環境が制限される中で多孔質炭素の結晶構造やSi-Npの構造等に関する研究については詳細に調べることができなかったことから、令和3年度では結晶構造や含有量、Si-Npの粒径制御などについても調べる必要がある。こうした点で概ねSiナノ粒子/多孔質炭素粉末の作製の概略となる条件を絞るところまでは進んだと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は粒径が20 nm前後のケイ素ナノ粒子(Si-Np)を膨潤多孔質炭素内に調製することができたが、膨潤構造の改善とSi-Npの含有量の制御、粒子径を小さくすることなどの課題も残された。こうした課題も含めて、令和3年度は以下のことを検討する。(i)熱硬化性樹脂小球体中のオリゴマーや未反応の低分子量成分を溶媒抽出して、多孔質樹脂小球体を調製する。この際に、溶媒に可溶な熱可塑状態から熱硬化の進行途中で硬化条件を制御して樹脂小球体中に溶媒可溶成分を残すことで溶媒抽出時に細孔が生成することと、こうした多孔質樹脂小球体は膨潤多孔質炭素と異なり、組織的には球の内部に孔を含むことで電極表面に形成される不働態被膜と呼ばれるSEIの生成を抑制し、Si-Npの効果を引き出せると期待する。(ii)得られた多孔質炭素小球体の結晶構造や細孔分布を測定して細孔内にSi-Npが生成できる有機ケイ素化合物の吸収条件を調べるとともに、熱分解条件についても調べる。(iii)有機ケイ素以外の有機半金属化合物の使用を検討し、半金属単体のナノ粒子の調製条件を検討する。(iv)生成物の結晶性や表面形状、細孔構造、内部組織、元素組成などについては令和2年度と同様の装置によって調べる。(v)予備実験として、負極電極としての電気化学特性を調べるとともに、SEI生成の影響についても解析する。(vi)カーボンナノチューブやカーボンブラックなどの導電助剤についても検討しながらコイン型セルを組立てて電池特性を調べる。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、4月から6月29日までが新型コロナウィルス感染防止対策として、本校は学生の遠隔授業対応で研究実験については停止せざるを得なくなった。また、12月においても2週間ほどの遠隔授業が実施されて研究実験が停止状態となり、その後も感染リスクが高まり、その都度研究実験の実施時間に制限がかかるようになった。こうした状況下では実験計画の一時中断が余儀なくされ、また、外部委託による測定についても、先方の大学等においても遠隔授業実施に伴い学外者の立入不可や測定装置の一時停止等が相次いだことによって実験で予定していた物品等の購入ができなかったり、出張ができなかったために当初予定した旅費の支出がなかったことから使用額が大幅に減り、残額が生じたためである。しかし、令和2年度研究予定の負極材の作製条件については短期間ながら順調に進んだことから、令和3年度においては令和2年度で実施できなかった実験や今年度予定している実験および測定、解析のために令和2年度の未使用額と令和3年度予定の実験等で予算の使用を予定している。
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Research Products
(2 results)