2020 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子膜の多孔構造制御による全固体電池用Si負極の高性能化
Project/Area Number |
20K05095
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
太田 鳴海 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主幹研究員 (40443171)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 全固体リチウム二次電池 / 高容量負極 / シリコンナノ粒子 / 多孔シリコン |
Outline of Annual Research Achievements |
全固体リチウム二次電池の高エネルギー密度化実現に資する高容量で長寿命なSi粒子負極電極体の開発を行う。研究代表者らはこれまで、比較的安価で電極の大面積化も可能なスプレー塗工法により作製した無孔Siナノ粒子の積層体が、全固体リチウム二次電池内で高い出力特性とサイクル安定性を示すことを明らかにしてきた。これは、充放電とともに繰り返される粒子の体積変化が隣接する粒子との融着を引き起こし、粒子積層体が蒸着膜のような連続体に形態変化することによる。従って、実用的な容量を示すまで分厚くしたSiナノ粒子積層体を長寿命化するには、ナノ多孔構造を導入したスパッタ膜で研究代表者らがこれまでに実証してきたように、積層体を構成するSi粒子にナノ多孔構造を導入することが効果的であることが予想される。そこで本研究では、まずナノ多孔Si粒子の合成に取り組み、スプレー塗工法による積層体を合成して電極特性評価をし、無孔粒子積層体との違いを見極めるとともに、その結果を踏まえて高容量で長寿命な全固体リチウム二次電池用Si粒子負極電極体の開発を行う。
初年度は、金属還元法を用いた多孔SiO2粒子の還元に取り組んだ。アルゴン雰囲気グローブボックス内でMg粉末と多孔SiO2粒子を混ぜ合わせ、白金パイプに封入し670℃で3時間焼成し、生成物を1M塩酸に一晩浸けて多孔Si粒子を得た。合成した粒子のX線回折パターンからSi結晶の生成が確認されたことから、本焼成条件において還元反応が起こったことが示唆された。しかしながらX線光電子分光のスペクトルから、合成した粒子表面は比較的厚いSiO2でおおわれていることも明らかになり、アルゴンガスフローにより焼成時に還元雰囲気の創出を行う卓上ガス置換炉の導入の際、真空置換機構の導入を追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに、順調に進展している。当初の計画にはなかった真空置換機構の導入を追加したが、金属還元剤によるSiO2還元の反応場として利用する卓上ガス置換炉の導入を行い、Mgによる無孔SiO2ナノ粒子の還元を開始した。また、当初の計画にはなかったガス置換機構の無い通常の小型電気炉内での焼成も実施し、MgによるSiO2還元反応の確認も、ガス置換炉の導入と並行して実施し、合成粉末のX線回折測定及びX線光電子分光測定を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、卓上ガス置換炉を用い、金属還元法を用いた無孔、多孔SiO2粒子の還元に取り組み、X線回折測定及びX線光電子分光測定を行いながら、Siナノ粒子の収率が高くなる実験条件の探索に取り組むとともに、合成されたSiナノ粒子を用いスプレー塗工法による電極体合成に取り組む。
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Causes of Carryover |
形状の異なるSiO2粒子の還元反応処理までには今年度至らなかったので、各種SiO2粒子の購入は来年度の予定とする。
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