2021 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波・ミリ波帯高機能電磁環境対策材の実現を目指した金属粒子複合材料の研究
Project/Area Number |
20K05103
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
笠置 映寛 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (10310947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真一郎 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10514391)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金属粒子 / 異方的形状粒子 / 導電率 / 誘電率 / 透磁率 / 反射係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,マイクロ波からミリ波帯で利用する広帯域電波吸収体,周波数選択性電磁遮蔽材といった高機能電磁環境対策材の実現を目指し,粒子の形状効果を活用した金属粒子複合材料を開発することである。 2021年度は,Cu粒子(球状・扁平状・樹枝状)複合材料,及びAgコートCu粒子(球状・扁平状・樹枝状)複合材料を作製し,導電率測定(2端子法),比誘電率測定(同軸線路法)を行い,これらの複合材料の電気特性,比誘電率周波数分散特性について検討を行った。複合材料の電気特性について,粒子形状が異方的なほど,粒子同士の接触に伴う電気的パスが出現する粒子濃度(パーコレーション濃度)は低くなり,同じ粒子濃度でも粒子形状が異方的なほど導電性は高くなる傾向にあることが確認された。複合材料の比誘電率周波数分散特性について,パーコレーション濃度以上の複合材料では,負の誘電率特性が観測された。Drudeモデルを用いた複素比誘電率スペクトルの解析から,プラズマ周波数は分散粒子の形状に依存し,異方的なほど高周波側にシフトすることが明らかとなった。またCu粒子表面をAgで被覆することで,パーコレーション濃度はより低くなり,負の誘電率が得られる周波数領域はより高周波にまで広がることが分かった。 金属粒子複合材料のミリ波領域における電波吸収・反射特性の検討を行うために,針状FeCoナノ粒子複合材料シート,及びAgコートCu粒子複合材料シートを作製した。針状FeCoナノ粒子複合材料シートについては,ミリ波帯反射係数測定(自由空間法)を行い,吸収特性が厚みに依存し変化する傾向を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の計画は,AgコートCu粒子(樹枝状,偏平状,球状)複合材料を作製し,導電率・複素比誘電率測定をもとに複合材料の電気特性,比誘電率周波数分散特性を明らかにすること,また,これらの特性におけるCu粒子表面のAg被覆効果,及び粒子の形状効果を解析することであった。加えて,AgコートCu粒子複合材料シート,針状FeCoナノ粒子複合材料シートを作製し,それらの自由空間法による電波吸収・反射特性の測定・解析を行い,複合材料シートと金属線配列材の組み合わせによる高機能電磁環境対策材の実現に向けた知見を得ることであった。 AgコートCu粒子複合材料の検討について,計画していた複合材料の作製,導電率・複素比誘電率測定,これらをもとにした電気特性,誘電率周波数分散特性に関する解析を行い,複合材料シート作製に向けた知見を得ることができた。また,AgコートCu粒子複合材料シートを作製し,自由空間法によるミリ波帯反射係数測定に着手したが,粒子濃度,シートの厚みといった条件を系統的に変化させた検討が必要となったため,現在,複合材料シートの作製,及び測定を進めている。また,10 GHz以下の自由空間法による反射係数測定にも着手し,本材料の適用周波数範囲を広げることに寄与するものと考える。 針状FeCoナノ粒子複合材料シートの作製,及びミリ波帯反射係数測定・解析について,昨年度に引き続いて実施し,金属パターン周期配列材との積層化に向けた知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ波からミリ波帯で利用する広帯域電波吸収体,周波数選択性電磁遮蔽材といった高機能電磁環境対策材の実現を目指し,今後,以下のことを実施する。 (1) Cu粒子複合材料(樹枝状,偏平状,球状),AgコートCu粒子(樹枝状,偏平状,球状)複合材料,針状FeCoナノ粒子複合材料のマイクロ波領域における比誘電率・比透磁率特性について検討を行い,複合材料シート作製のための知見を得る。 (2) Cu粒子(樹枝状,偏平状,球状)複合材料,AgコートCu粒子(樹枝状,偏平状,球状)複合材料,針状FeCoナノ粒子複合材料シートを作製し,自由空間法による反射係数測定を行い,各複合材料シートの比誘電率・比透磁率特性,電波吸収・反射特性,及びそれらにおける粒子形状効果について検討を行う。 (3) 金属粒子複合材料シートと金属パターン周期配列材からなる積層材の構成について検討する。そして,金属粒子複合材料シートと金属パターン周期配列材からなる積層材を試作し,反射係数測定を行うとともに,比誘電率・比透磁率特性,電波吸収・反射特性の解析を実施し,高機能電磁環境対策材の実現に向けた検討を行う。
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Causes of Carryover |
実験・測定,及び成果発表の一部において,新型コロナウイルス感染拡大の影響による当初計画からの変更が生じ,そのための旅費として計上していた予算が使用できなかったために,当該助成金(次年度使用額)が生じた。2021年度に実施できなかった実験・測定,及び成果発表は,翌年度の計画に組み込み,生じた当該助成金を活用して研究を遂行する。
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