2021 Fiscal Year Research-status Report
有機カチオンと固体触媒の距離と触媒活性の関係~メタン活性化触媒の開発を目指して
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20K05106
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
依田 英介 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (70377589)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機カチオン / 固体酸ナノシート / 固体塩基触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の研究代表者らは、これまでにゼオライトなどの固体酸を有機カチオン交換でイオン交換した触媒が、塩基性を有することを見出してきた。その中で、固体触媒の塩基点と、対イオンとして存在する有機カチオンの距離が触媒活性に影響を与える可能性があることが示唆された。そこで本課題では、様々な固体酸と有機カチオンを組み合わせた触媒を調製し、その反応活性を調べる。それにより、固体酸と有機カチオンの距離が、反応活性に影響を与える可能性があるという仮説を検証することが目的である。 今年度は、遷移金属層状化合物を剥離して得られる固体酸ナノシートのプロトンを有機カチオンとイオン交換することで得られる、有機カチオン交換ナノシートの調製を行った。有機カチオンには、アルキル鎖長がC1~C4のテトラアルキルアンモニウムを用いた。有機カチオンとのイオン交換の条件・方法を探索した結果、テトラアルキルアンモニウムの水酸化物を用いると有機カチオン交換ナノシートが調製できることが分かった。粉末X線回折によるキャラクタリゼーションの結果から、使用した4つの有機カチオンで、いずれも有機カチオン交換ナノシートが調製できていることが確認された。また、アルキル鎖長がC1~C4と長くなるほど、固体酸と有機カチオンの距離が離れていることが示唆される結果が得られた。 有機カチオン交換ナノシートの触媒活性は、酪酸エチルとメタノールのエステル交換反応により行った。その結果、アルキル鎖長がC1~C3のテトラアルキルアンモニウムで交換したナノシートでは同程度の低い活性であったが、テトラブチルアンモニウムで交換したナノシートでは比較的高い活性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、アルキル鎖長がC1~C4のテトラアルキルアンモニウムを用いて有機カチオン交換ナノシートを調製することに成功した。これらの触媒を使って活性を比較することができたので、研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、アルキル鎖長がC1~C4のテトラアルキルアンモニウムを用いて有機カチオン交換ナノシートの調製を行い、それぞれの有機カチオン交換ナノシートが調製できていることが確認された。また、酪酸エチルとメタノールのエステル交換反応により行った触媒活性の評価では、アルキル鎖長がC1~C3のテトラアルキルアンモニウムで交換したナノシートでは同程度の低い活性であったが、テトラブチルアンモニウムで交換したナノシートでは比較的高い活性を示すという結果が得られた。しかし、アルキル鎖長と活性に明確な相関関係はなく、有機カチオンと固体触媒の距離と触媒活性の関係は明確にはならなかった。 次年度は、さらに異なったタイプの有機カチオンを用いて有機カチオン交換ナノシートを調製し、活性を調べる必要がある。今年度は、各有機カチオンの水酸化物を用いて触媒を調製したが、市販の試薬で水酸化物として入手できる有機カチオンは種類が限られている。塩化物や臭化物の有機カチオンは入手可能なものが多いので、塩化物や臭化物によるイオン交換条件を検討する必要がある。まずは、テトラブチルアンモニウムの塩化物や臭化物によるイオン交換を行う。この調製に成功したら、今年度の研究で成功している、水酸化物により調製された触媒の活性と比較し、調製方法の違いが活性に影響を与えるかどうかを確認する。次に、C1~C4のテトラアルキルアンモニウム以外の有機カチオンの塩化物や臭化物を用いて触媒を調製し、キャラクタリゼーションおよび活性の評価を行う。これにより、固体酸と有機カチオンの距離が、反応活性に与える影響を検証することができると考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度、新型コロナウイルスの影響により思った通りに研究を進められない時期があったので、予定通りの予算消化とはならず残予算が生じていた。今年度も次年度使用額が生じたが、その額は昨年度よりも少なくなっており、本助成金を概ね当初の計画通りに使用できていると考えている。
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