2022 Fiscal Year Research-status Report
蒸気重合法によるナノポーラスカーボン被覆チタン酸化物ナノ粒子の創製
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20K05108
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
鄭 涛 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 准教授 (50737228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 憲和 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (10283730)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カーボン被覆チタン酸化物 / リチウムイオン電池 / 色素増感太陽電池 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. テトロヒドロフランとチタンテトライソプロポキシドを原料として、粒子径が20 nm以下の異なる結晶構造をもつTiO2ナノ粒子を作製した。このTiO2ナノ粒子を電極に用いた色素増感太陽電池のI-V特性を評価した結果、変換効率が8.4 %となり、市販のTiO2(P25)の2.5 %より高かった。これはTiO2の小さい粒子径や高分散性に由来するのではないかと考えられる。 2. 溶液重合法および蒸気重合法を用い、フルフリルアルコールを重合・炭化させるによって、ナノポーラスカーボンを被覆したTiO2を作製した。カーボン被覆により、TiO2の高温においてのアナターゼ相からルチル相への相転移が抑制され、結晶構造の安定化が確認された。また、重合時間によるカーボン被覆量の制御が可能であることが分かった。光触媒性能評価より、カーボン被覆TiO2はカーボンによる吸着とTiO2による光触媒の効果を両方確認でき、吸着と触媒作用のハイブリット化が成功した。 3. リチウムイオン電池の負極材料として期待されいているLi4Ti5O12の電気伝導性を向上させるため、材料のナノ構造化、およびカーボン材料との複合化が有効であると考えられる。本研究では、前述のTiO2とLiOHを反応させ、粒子径が10~30 nm、比表面積の高いLi4Ti5O12ナノ粒子を作製した。さらにフルフリルアルコールを炭素源として、前述の蒸気重合法を用い、カーボン被覆Li4Ti5O12を作製した。重合触媒と重合時間によるカーボン被覆量の制御ができたが、Li4Ti5O12にTiO2の結晶構造が見られ、今後このTiO2の形成メカニズムや電池性能への影響について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本研究作製したTiO2粒子を用いた色素増感太陽電池のI-V特性を評価した結果、変換効率が市販のTiO2(P25)より高いことが分かった。焼成温度を変化させることで、アナターゼ相およびルチル相の割合および粒子径の異なるTiO2粒子を作製した。アナターゼ相がより多く、粒子径がより大きいTiO2の方が変換効率がより高いことが分かった。この結果より、光触媒性能に最適な結晶構造および光散乱に最適な粒子径が存在できるのではないかと考えられる。 2.蒸気重合法を用い、TiO2粒子の周りにナノポーラスカーボンを被覆するが成功し、重合時間によるカーボン被覆量の制御も可能にした。メチレンブルーを用いた触媒性能評価の方法を確立し、得られたカーボン複合光触媒にカーボンによる吸着作用とTiO2による光触媒作用を両方確認できた。吸着・触媒のハイブリット化を最大限に発揮できるカーボンの最適な被覆量や光源の波長や照度について検討する必要がある。また、本研究は深紫外LEDによる水の殺菌についての検討が新たにスタートし、紫外線しか吸収しないTiO2触媒とLEDとの複合に関する研究も進んでいる。 3.アモルファスTiO2を原料として用い、LiOHと反応させ、リチウムイオン電池の負極材料用Li4Ti5O12を合成した。この材料の電気伝導性を向上させるため、蒸気重合法を用い、カーボン被覆Li4Ti5O12の作製を行った。重合触媒の量や重合温度、重合時間を調整することで、カーボン被覆量の制御に成功した。しかし、カーボン被覆したLi4Ti5O12にTiO2の結晶構造が見られた。今後、このTiO2の形成メカニズムや電池性能への影響について検討する。また、アモルファスTiO2とNaOHと反応させ、ナトリウムイオン電池の電極材料として期待されているNa2Ti3O7の合成にも挑戦している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.原料比や焼成温度、焼成時間を変化させ、TiO2の結晶構造および粒子構造を制御する。得られるTiO2を電極に用いた色素増感太陽電池の性能を評価し、TiO2の結晶・粒子構造および表面官能基と変換効率との関係について検討を行い、最適な構造モデルを提案する。また、電極ペーストの塗布方法や正負電極板の接着方法などを工夫し、電池セル作製のバラつきおよび液漏れなどの発生を防ぎ、セル作製のノウハウを蓄積する。 2.カーボン被覆TiO2の作製において、樹脂の重合時間などについて検討を行い、吸着および触媒性能を最大限に発揮できる最適なカーボン被覆量を確認する。また、反応ルート、テンプレート剤の使用などについて検討し、中空構造や層状構造の形成および制御に挑戦する。さらに、異種元素をドープし、可視光で作用する光触媒の開発に着手する。 3.Li4Ti5O12およびカーボン被覆Li4Ti5O12の結晶構造や粒子径などの物性を確認するとともに、リチウム電池の電池材料としての電気特性を評価する。ナトリウムイオン電池用Na2Ti3O7およびカーボン被覆Na2Ti3O7の合成を行い、構造評価を行う。リチウムイオンとナトリウムイオンのイオンサイズが異なるため、カーボン層の細孔径と細孔構造が重要となる。カーボン層の細孔構造の形成が界面活性剤の分解に大きく依存するため、今後、親水基および疎水部の分子長が異なる界面活性剤を使用することで、カーボン層の細孔構造を制御する。得られるLi4Ti5O12およびNa2Ti3O7の電極シートを作製し、リチウムイオン電池およびナトリウムイオン電池のコインセルを組み立てる。放電容量、サイクル特性などの電池特性を評価することで、材料の構造と電極性能の相関を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の関係で、出張や学会参加が困難となったり、オンライン参加による旅費の節約が生じたりして、旅費などの経費が次年度使用額として生じた。この助成金を研究に必要な物品や薬品の購入に使用する予定である。 また、感染対策が緩和され、今後の学会参加や出張について検討し、研究発表や情報収集に経費を使用する。
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