光励起衝撃波による難燃性Mg合金FSW継手の攪拌組織改質と疲労信頼性向上

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K05109
• Research Institution: Okinawa National College of Technology
• Principal Investigator: 政木 清孝 沖縄工業高等専門学校, 機械システム工学科, 准教授 (30323885)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 摩擦攪拌接合 / 難燃性マグネシウム / レーザピーニング / 表面改質処理 / 疲労特性評価 / ショットピーニング

Outline of Annual Research Achievements

鉄道車両などの機械構造物に難燃性マグネシウム合金を適用するうえで，部材の接合部の強度改善が重要となる．接合方法として摩擦攪拌接合（FSW）の適用が注目されており，FSW継手部の疲労破壊メカニズムの解明と疲労特性改善に関する知見が必要不可欠である．本年度もコロナ感染者数のさらなる増大を受けて学生の登校禁止が続き，思うように進められなかった．難燃性Mg合金製FSW継手作成のための接合条件は確立しているが，上記の影響によりFSW継手材を作成することができず，母材に対するピーニング施工の評価を行うこととした．以下に本年度の研究成果を示す．
大気中でのパルスレーザ照射による表面改質と残留応力付与（当初の研究計画目的②-1）：FSW継手の強度改善を目的として，パルス幅がフェムト秒オーダーのパルスレーザを大気中で材料表面に照射し，発生する衝撃波でピーニング処理を行うDry Laser Peening (Dry-LP)処理の適用を考えている．本年度は，研究協力者の佐野智一氏（大阪大学）と施工に関する検討を行い，難燃性Mg合金表面に圧縮残留応力と硬化層を付与する条件を見いだした．具体的にビッカース硬さが約67Hvの母材表面にDry-LP処理を施すことで，約2倍となる110Hvまで硬さを向上することができ，200MPa程度の高い圧縮残留応力を付与できた．
ショットピーニング処理した難燃性Mg合金の強度特性調査（研究の進捗状況を鑑み追加）：上記Dry-LP処理による疲労特性改善効果を調査するにあたり，その比較材料として従来のShot Peening (SP)処理を適用した材料を用意した．本年度はFSW継手を作成できなかったことと，レーザー設備の不調が重なったため，用意していた母材試験片を用いてこの評価を行った．母材の曲げ疲労強度特性を確認したあと，SP施工による疲労特性改善効果を確認した．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度も昨年度と同様に新型コロナウイルスの流行によって，学内への立ち入りなどが厳しく制限されたとことにより，FSW継手作製，試験片作製などに取りかかれなかった．年度の後半に母材試験片の作成まで実施できたため，大阪大学にてパルス幅がフェムト秒の光源を使用したレーザピーニング施工（Dry-LP施工）を行う予定としていたが，感染拡大の影響を受けて大阪大学への出張は中止となり，また，同時期に先方のレーザー発振器が不調となったため，今年度のDry-LP処理を断念せざるを得なかった．研究を停滞させる事を避けるため，急遽Dry-LP施工材の比較材としてショットピーニング（SP）処理材を用意することとし，協力企業への施工依頼を行った．年度末直前に試験片へのSP施工が終了して返送されてきたため，現在引き続き平面曲げ疲労試験を実施しているところである．
本来であれば，FSW継手材に関する接合部の組織調査と疲労き裂の発生挙動と，き裂の進展挙動の相関性調査を実施する予定であったが，着手できなかったため次年度に持ち越しとなった．また，予定されていた学会や国際会議などへの参加を予定していたが，実験データがないことから発表するまでには至らなかった．
本年度の本来の研究計画については十分とはいえないが，研究計画の見直しを行って研究を停滞させることなく実施しているため，「（2）おおむね順調に進展している．」と判断した．

Strategy for Future Research Activity

令和４年度は，（１）難燃性Mg合金製FSW継手部の組織学的特徴と疲労特性との相関性調査について，重点的に調査を行う予定である．コロナ感染者増大の影響により２年間FSW継手の製作ができなかったため，この件が大幅に停滞している．FSW継手材の疲労試験データを拡充し，破壊起点とき裂進展が攪拌組織にどのように影響を受けるか調査をすすめる．
一方の，（２）大気中でのパルスレーザ照射による表面改質（Dry Laser Peening）と残留応力付与については，まずは母材へのDry-LP施工を行って，その疲労特性改善効果について検証する．このとき，比較材として用意したSP処理材との強度特性の相違について，き裂発生・進展挙動を組織学的な観点から検討を加える予定である．FSW継手に対するDry-LP施工は，試験片作成の進捗状況に応じて実施を検討したい．研究成果の発表については，コロナ禍における学術講演会の開催状況等を鑑みながら行うこととする．本研究で適用しているDry-LP施工に関する研究は，被加工材がFSW継手でなくとも世界的に先行している研究であり，積極的に成果を国内外にアピールしたい．

Causes of Carryover

コロナウイルスの世界的流行により，参加を予定していた国際会議，国内の学会講演会も中止やWEB開催となった．また，大阪大学でのレーザーピーニング施工を予定していたが全てキャンセルとなったため，出張旅費として計上していた経費をほとんど残す事態となった．また，学内の立ち入り禁止規制などによって試験機の整備も実施できなかったため，予算の使用予定が大幅に狂ってしまった．予算を計測装置の消耗品などの購入に振り分けたが，多額の予算残を生じてしまった．次年度に繰り越すが，次年度も旅費使用予定額の大幅減が見込まれるため，今年度できなかった試験機の整備などに充てたい．