2020 Fiscal Year Research-status Report
積層溶融型3Dプリント複合材の粒子法を用いた成形シミュレーション
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20K05113
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
轟 章 東京工業大学, 工学院, 教授 (50211397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 3Dプリンタ / 複合材 / シミュレーション / 粒子法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初予定では令和2年度において,「すでに予備的研究で実施しているMPS法にエンタルピの解析を組み入れた複合材粒子の解析を実施し,実験と比較する.既に開発済みの方法の有効性の検証を行うと同時に,有効半径などのシミュレーションに必須の定数の調整を行う」としている.令和2年度においては,エンタルピの解析を取り入れて,樹脂部分の融解熱を考慮したMoving Particle Semi-implicit法(MPS法)の開発に成功した。また,当初は繊維体積含有率の影響を考慮するためにDarcy則を用いるとしていたが、Darcy則を用いた場合,非圧縮の条件が満足されないことが発見された.このため,樹脂粘性のべき乗則を取りやめ,粘性として低せん断域,高せん断域において粘度一定となるCarreauモデルを採用し,その係数に対して繊維体積含有率Vfの関係をAndradeの式を用いて表示することに改善した.これによって繊維が増えたときの粘性の増加を表現することができるようになった. 予備研究で使用されていたエンタルピ解析が陽解法であったために,実際の3Dプリント複合材プリンタのノズル寸法に合致するように粒子径を小さくすると,解析のための時間ステップが非常に小さくなり,実現不可能となってしまう問題も,エンタルピの陰解法を用いることで解決した. 以上の改良によって,3Dプリンタでの実寸法においてMPS法を用いて解析が可能となった。そこで市販の3DプリンタであるX-Plus(Qidi Tech,China)を用いて直線を引く実験を行い,二次元解析と比較することを行った.二次元解析では円形ノズルの移動の影響を考慮するためにノズル径変化を模擬する横方向移動を開発した.実験値と比較検討をしたところ,プリント形状はゼロ平均正規化相互相関マッチング手法で90%の程度で断面形状が一致していることが実証された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績にも記載したが,当初は繊維が含まれる影響をDarcy則で記述する予定であった.その不具合を発見し,樹脂粘性のべき乗則を取りやめ,粘性としてCarreauモデルを採用し,その係数に対して繊維体積含有率Vfの関係をAndradeの式を用いて表示することに改善することによって繊維が増えたときの粘性の増加を表現することができるようになった.このため,非圧縮のMPS法のシミュレーションと整合性の良い結果が得られるようになり,繊維体積含有率の影響が評価可能となった.また,エンタルピ解析に使用していた陽解法では実際の3Dプリンタの寸法では実用的な時間内で解析が不可能であったため,陰解法に変更を実施することでシミュレーションが実施可能となった. 上記の2点の改良によって,実際の3Dプリンタの条件でシミュレーションが可能となり,当初の予定どおり,シミュレーションを実験条件で実施して各種シミュレーションパラメータの調整を行うことが可能となった. 当初の予定通り,1本の直線を引く簡単な3Dプリント実験を実施し,印刷条件を3通りに変えて実験を実施した結果と比較して良く一致することを確認することができたため,当初予定と異なる手法を選ぶことになったが,順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度までの研究成果において,順調にMPS法を利用して複合材粒子の流動解析と固化解析が可能となった.今後の研究においては,当初の計画通りに実施することが可能であるため,令和3年度では初年度のフィラメントの滴下の横に別の滴下を行い,固化したプリントパスと溶融パスとの融合をシミュレーションする.Darcy則では非圧縮条件を満足しないことが分かっているため,粘性としてCarreauモデルを採用し,その係数に対して繊維体積含有率Vfの関係をAndradeの式を用いて表示する方法を用いてシミュレーションを実施する.実際の3Dプリンタでの実験も実施し,融合部分面積の比較実験を行ってシミュレーション手法 の有効性を検証する.
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