2021 Fiscal Year Research-status Report
Large-scale electronic structure calculation of cerasome surface model for DDS application and its opening method
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20K05116
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
小田 将人 和歌山大学, システム工学部, 講師 (70452539)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / セラソーム / 電子状態計算 / 密度汎関数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
患部のみに薬剤を作用させるドラッグデリバリーシステム(DDS)が注目されている。セラソームは、リポソーム表面をセラミック加工した強固なベシクル構造を持つため、DDSの新しいキャリア候補として注目が集まっている。セラソーム開封のためには、結合に関与する電子状態の知見が必須であるが、現在まで表面のミクロな物性に注目した理論研究はほとんどなかった。本研究では、全体を扱うのではなく、セラソーム表面において開封の鍵となる部分を抜き出した構造モデルを構築し、それに対する電子状態計算を行うことによって表面のシロキサン結合(Si-O-Si結合)に関与する電子状態密度や波動関数を詳細に明らかにする。その結果をもとに、電子注入などによる開封方法開発の指針を与えることを目的とする。
セラソーム表面におけるシロキサン結合ネットワークの基礎物性解明のモデルケースとして、半導体Si表面における酸素の吸着状態解析を行なった。シロキサン結合の周辺環境による違いを電子状態、振動状態、内核化学シフトなど様々な解析手法で比較した。内容をまとめ、JJAP60, 125501,(2021)として発表した。これらの知見はセラソーム表面におけるシロキサン結合の電子状態解析に応用可能である。
並行して、セラソームモデルの拡張を行なった。これまでの研究では最も単純な6員環格子を基本としたハニカム構造を使用していたが、現実のセラソーム表面にはさまざまな格子構造が存在している。手始めとして5, 7員環を含むモデルやさらにそれらの一部に置換機を導入したモデル構築を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、当初計画していた物質・材料研究機構の大型計算機を使用する期間が限られていたためである.初年度に購入した計算機を用いて、セラソーム表面の電子状態に関するシロキサン結合の基礎物性の解明を進めると同時に、拡張したモデルの構築を行った。最終年度で拡張したセラソームモデルの電子状態解析を行う準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、令和3年度に拡張した複雑な構造をもつセラソームモデルに対する電子状態計算を行い、セラソーム表面と構造の関係を解析する。解析には、令和3年度得られたシロキサン結合の基礎物性に対する知見を利用する。静的な安定構造を明らかにしたうえで、水分子を含む第一原理分子動力学計算を行い、置換基を含む表面電子状態が、水分子によりどのように変化するかを解析する。注目するバンドギャップ内の孤立した反結合性軌道のエネルギー範囲を定量的に算出し、どのような状況であれば電子注入によってセラソームを開封することができるかを検討する。
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Causes of Carryover |
事務補佐員の勤務調整により差額が生じたため。次年度の事務補佐員の人件費に充当する計画である。
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Research Products
(2 results)