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2021 Fiscal Year Research-status Report

ナノ粒子分散強化合金のバイモーダル化による高強度を維持した高延性発現機構の解明

Research Project

Project/Area Number 20K05117
Research InstitutionEhime University

Principal Investigator

阪本 辰顕  愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (80403848)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsメカニカルアロイング / 分散強化 / 強制固溶 / 幾何学的に必要な転位 / バイモーダル組織
Outline of Annual Research Achievements

昨年度、Alと3wt%のAl2O3をメカニカルアロイング(MA)法により合金化する際の、MA雰囲気中の酸素量の制御により、AlとOが強制固溶した過飽和固溶体(SS)粉末と、AlにAl2O3が析出した粒子分散(PD)粉末を作製することができた。また、これら2種類の粉末をそれぞれ単独で焼結すると、SS粉末よりPD粉末の焼結体の粒径の方が小さいことがわかった。そこで今年度はこれら2種類の粉末を混合して焼結し、バイモーダル組織作製を試みた。体積比1:1で混合した粉末を焼結し引張試験を行った結果、単独で焼結したSS粉末焼結体およびPD粉末焼結体と比較して、強度延性バランスに改善が見られなかった。原因として粗大粒内部に分散粒子が存在している可能性が考えられたため、次に、純AlとSS粉末を体積比1:1で混合し焼結した。しかし焼結体の強度延性バランスは改善されなかった。強度延性バランスが改善されない原因として、粗大粒と微細粒の界面が少ないことが考えられたため、純AlとSS粉末にごくわずかのMA加工を施した。その粉末の焼結体を引張試験した結果、強度延性バランスに改善が見られた。光学顕微鏡観察の結果、粗大粒からなる純Alの領域と、微細粒からなるSS粉末の領域の界面がMA前より増加した。これにより幾何学的に必要な転位が増加し、加工硬化が促進された結果、強度延性バランスが改善したと考えられる。加工硬化率が促進されたことは応力ひずみ曲線から確認された。今後、粗大粒と微細粒の界面を増やす方向で、組織制御を行っていく必要があることがわかった。
また昨年度に行ったAlとAl2O3のMAと同様にAlと4wt%Y2O3のMAを行い、SS粉末とPD粉末を同様に得られることがわかった。一方、MA雰囲気を大気とするとYNが生成し、十分なY2O3が生成せず、昨年度と異なるPD粉末が作製された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

バイモーダル組織を有する分散強化合金に関する報告例は少なく、分散強化の要因である分散粒子が高延性に及ぼす影響についての報告はない。本研究の目的は、バイモーダル組織を利用して、高強度高延性分散強化合金を作製するとともに、分散粒子が高延性に及ぼす効果を調べることである。今年度は、昨年度に作製した過飽和固溶体粉末と粒子分散強化粉末を混合して焼結することでバイモーダル組織作製を試みた。単に混合しただけでは2種類の粒径からなるにもかかわらず強度延性バランスは改善されないことがわかり、粗大粒と微細粒の分布状態が強度延性バランスに影響することがわかった。そこで、2種類の混合粉末にMAをわずかに施すと、強度延性バランスを改善することがわかり、粗大粒と微細粒を微細に分散させ、互いの界面を増やすことが重要な要因であることがわかった。もう1つの目的である分散粒子が及ぼす影響については未だ不明であり、次年度以降の課題である。
またAlとAl2O3のMA粉末作製と同様の方法でAlとY2O3のMA粉末を作製し、過飽和固溶体粉末と粒子分散粉末を作製することができた。また、昨年度と異なる方法として大気雰囲気でMAを行った結果、窒素の存在下ではYNが生成することがわかり、Ar雰囲気MAとは異なる合金粉末が作製されることがわかった。YNの分散状態は不明であるため、今後TEM観察にて明らかにする。次年度は、過飽和固溶体粉末と粒子分散粉末を用いてバイモーダル組織を作製し、機械的性質を調べるとともに、微細組織解析を進めていく予定である。Al-Y2O3系を使用することにより組織観察と元素分析が容易になり、分散粒子の効果を明らかにすることにつながることが期待される。以上のように、バイモーダル組織作製についての指針が得られつつある状況であり、本研究はおおむね順調に進んでいる段階である。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究は、これまで得られたAl-Al2O3系とAl-Y2O3系に関する結果に基づき、両合金系を用いて、粗大粒と微細粒の界面を増やすような微細組織制御を行う方向で進めていく。界面を増やすために、MA条件である、MA時間、回転速度、ボールと粉末の重量比などのパラメータを最適化する。強度延性バランス改善のメカニズムについては、幾何学的に必要な転位密度が増加し、加工硬化が促進され、くびれの発生が抑制されることで均一伸びが向上することが要因として考えられるため、変形途中の試料について、走査型電子顕微鏡-後方散乱電子回折(SEM-EBSD)法を用いてKernel Average Misorientation(KAM)値の解析を行うことにより、幾何学的に必要な転位の転位密度を求める。また、変形途中の試料について、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、転位の分布状態を解析し、バイモーダル組織の変形に起因する転位分布状態を示しているかどうかの解析を行う。また分散粒子が延性に及ぼす効果として、延性を主として担う粗大粒の内部に分散粒子が存在することが延性低下の原因になることが予想されるため、粗大粒中に分散粒子が存在する試料と存在しない試料を作製し、強度延性バランスと微細組織中の分散粒子の分布状態との関係を調べることを目的とする。前者の試料は、過飽和固溶体粉末と粒子分散粉末を混合することで作製し、後者の試料は、過飽和固溶体粉末と純Alを混合して作製する。
また、大気雰囲気でのMAにより作製されたYNを含む粉末の機械的特性と微細組織を調べ、バイモーダル組織作製に使用することを試みる。焼結後の結晶粒径を調べ、YNの結晶粒界ピン止め能力を評価し、Y2O3が存在する粒子分散粉末とYNが存在する粒子分散粉末の違いを明らかにする。

Causes of Carryover

コロナウイルスの影響で旅費を使用することがなかったため、当初の予定より使用する額が減少することとなった。次年度は、TEM観察やEBSD測定を行うための試料作製用品や外注費に使用する予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2022 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] Formation of Particle-Dispersed Nanocomposite and Supersaturated Solid Solution by Mechanical Alloying of Al and Al2O3 Powders2022

    • Author(s)
      Tatsuaki Sakamoto, Tomoharu Mizuka, Shinya Shiga, Hiromichi Takebe
    • Journal Title

      MATERIALS TRANSACTIONS

      Volume: 63 Pages: 141-147

    • DOI

      10.2320/matertrans.MT-L2021016

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] メカニカルアロイング法による汎用金属をベースとしたハイエントロピー合金AlCuFeTiZnの作製2021

    • Author(s)
      内田万里子, 阪本辰顕, 武部博倫
    • Organizer
      日本鉄鋼協会・日本金属学会 中国四国支部 鉄鋼第64回・金属第61回 合同講演大会
  • [Presentation] 熱処理によるバイモーダル組織を有する鉄鋼材料の作製2021

    • Author(s)
      阪本辰顕、安田若菜、武部博倫
    • Organizer
      日本金属学会秋期大会
  • [Presentation] AlとY2O3のメカニカルアロイングによる粒子分散粉末と過飽和固溶体粉末の作製2021

    • Author(s)
      阪本辰顕、神野佑輔、武部博倫
    • Organizer
      日本金属学会春期大会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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