2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis on the sites of existence and paths of migration for hydrogen in metallic materials for structural use by means of some visualization techniques
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20K05128
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
伊藤 吾朗 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 特命研究員 (80158758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 純也 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (20735104)
倉本 繁 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (10292773)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水素 / 可視化 / トリチウムオートラジオグラフィ / 水素マイクロプリント / 2相ステンレス鋼 / 弾性反跳粒子検出法 / アルミニウム合金 / 水素化チタン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、水素の移動経路と水素が比較的安定に存在するトラップサイトを原理的に仕分けて識別する目的で、2相ステンレス鋼を用いて。主にTARG (トリチウムオートラジオグラフィ法:水素の放射性同位元素であるトリチウムを利用した水素の可視化手法)により調査を開始した。トリチウムチャージ後、拡散性水素を十分放出させない状態でTARGを行った場合に、HMPT (水素マイクロプリント法:金属中の水素が原子状であることを利用した水素の可視化手法)の効果がどの程度含まれているかを調査する目的で、乳剤被覆後、液体窒素に浸漬してから30min後および11d露光後に現像・定着し、検出される銀粒子数を比較した。その結果、浸漬後30minで観察した試料からも露光時間から推算される量以上の銀粒子が検出され、11d露光した試料にもHMPTの効果が含まれていることが分かったが、その量は全銀粒子数の約1/10であり、金属組織との対応において大勢を左右しないと結論された。 他方、原理的に水素の存在位置を3次元で可視化可能な透過ERDA(Elastic Recoil Detection Analysis: 弾性反跳粒子検出)法を、水素プラズマ照射したアルミニウムに適用すべくプラズマ照射した試料を準備したが、X線回折で水素化物生成の確認が取れなかった。そこで令和3年度は、まずアルミニウムよりも水素化物を形成しやすいTiを第2相(Al3Ti)の形で含む、Al-Ti合金について、プラズマ照射を行い、水素化物形成を確認する。その後、Tiの水素化物が生じた試料を透過ERDA法で解析するが、この装置にはEDX (エネルギー分散型X線分光装置)が付帯していることから、TiのX線像を同時に撮影することにより、Tiの存在位置と水素の存在位置が一致することを示すことにより、透過ERDA法の有用性を実証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、トリチウムチャージ後、拡散性水素を十分放出させない状態でTARGを行った場合に、HMPTの効果がある程度含まれているものの、その程度は、金属組織との対応において大勢を左右しないと結論されたので、令和3年度は、所期の目的達成のための実験を予定し、令和4年度にまとめることができると考えている。 他方、透過ERDA法については、以前の報告(“Microscopic 3-dimensional mapping of hydrogen bubbles in polycrystalline Al by elastic recoil detection analysis under transmission geometry” A. Yamazaki, K. Sasa, S. Tomita, S. Ishii, H. Naramoto, M. Sataka, H. Kudo, G. Itoh and M. Ohkubo: AIP Advances 9, 105111 (2019); doi: 10.1063/1.5099528.)と同様に純アルミニウムへの水素プラズマ照射を行い、試料として使用しようとしたが、水素化物生成の確認が困難なことが分かった。一方で、水素化物を形成しやすいTiを第2相(Al3Ti)の形で含む、Al-Ti合金を試料とすることにより、Tiの存在位置と水素の存在位置が一致することを示すことにより、透過ERDA法の有用性をより強固に実証できるとの着想に至ったので、令和3年度内に所期の目的達成のための実験に着手し、令和4年度にまとめることができると考えている。 以上を総合して、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の概要に記した結果を踏まえ、2相ステンレス鋼におけるTARGとHMPTによる水素の安定的な存在場所と移動経路の明確区分化の目的達成のため、令和3年度は、予めEBSD (電子線後方散乱回折)法により、2相の境界を明確化した試料に対して、TARGを適用し、所期の目的を達成する予定である。必要に応じてTARGと同じ条件で軽水素をチャージした試料について、乳剤被覆からの時間を変化させてHMPTを行い、令和4年度に成果をまとめたい。 他方、透過ERDA法については、令和3年度は、前述のAl-Ti合金について、プラズマ照射を行い、水素化物形成を確認した後、Tiの存在位置と水素の存在位置が一致することを示すことを最低限とし、令和4年度にかけて、成果をまとめつつ、透過ERDA装置の使用可能時間によるが、HMPTやTARGといった湿式手法でとらえにくいマグネシウム中の水素について、透過ERDA法により捉えることができるかどうか、可能性を探る。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で、対面の学会・研究会がOnlineとなり、旅費が予定より少なく済んだ。その分、グループ内での実験研究を進めた結果、物品費が予定より多くなったが、合計として完全には相殺せず、年度末近くに5千円未満の残額が生じることが分かったが、これを無理に予算範囲内で執行することが困難であったため、令和3年度に使用することとした。
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