2021 Fiscal Year Research-status Report
骨含有元素とチタンの合金化・複合化による骨形成能に優れた表面の創製
Project/Area Number |
20K05130
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稗田 純子 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40566717)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | チタン合金 / 骨含有元素 / 骨形成能 / プラズマプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
疾病や事故により損傷した骨や歯の治療に用いられる体内埋入型Ti製部材(骨折固定具,人工関節や歯科インプラントなど)では,生体骨との良好な接着性に加えて, 早期治療のために高い骨形成能が求められる.骨とTi合金の早期接着を目指して,従来のTi合金よりも骨形成能に優れるTi合金の探索や表面処理の開発が行われている.Ca,Mgは生体必須元素であり,骨の無機成分の一つである.骨などの体内に存在する元素を含んだ材料表面では,表面酸化物の存在やそれらの元素の溶出により, 骨形成が促進されることが分かっている. よって,TiとCa, Mgを合金化することで, 骨形成能に優れる新規生体用Ti合金を開発できる可能性がある. 本研究では,生体適合性Ti合金としての骨含有元素とTiの合金の開発を目的として,一元高周波(RF)マグネトロンスパッタ法を用いて,Ti-Ca,Ti-Mg合金膜の作製を試みた.任意の組成のTi-Ca,Ti-Mg合金膜を作製するため, ターゲットの構成を検討した.次に,作製した膜の評価(結晶構造,表面の化学状態)および生体適合性評価を行い,組成と諸特性との関係を調査・検討した. 昨年度のターゲット構成の検討により,Ti-Ca,Ti-Mg合金膜の組成制御に成功しており,今年度は任意の組成のTi-Ca合金膜の結晶構造,生体適合性評価の一つとして,生理食塩水へのTiおよびCaの溶出量を調査・検討した.X線回折法および透過電子顕微鏡観察による結晶構造の調査より,Ti-Ca合金膜はアモルファス構造であることがわかった.生理食塩水への浸漬試験より,Tiの溶出は起こらないが,Caは溶出することがわかった.Caイオンの溶出量は,膜のCa濃度が高いほど増加した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は,金属Caをターゲットとして扱うことが難しかったため,Mg-Ca合金をターゲット材としてTi-Mg-Ca合金の作製を計画していたが,金属Ca以外のターゲット材を採用することで,Ti-Ca合金の作製が可能となった.それに加えて,当初の研究計画での実施項目を達成しているため,順調に進んでいると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
(相分離型Ti/Ca,Ti/Mg複合体の作製と各種特性評価) RFスパッタ装置に基板温度制御機構を導入し,成膜時に基板を加熱することにより,スパッタ粒子の基板表面での拡散を促進し,相分離型Ti/Ca,Ti/Mg複合体を作製する.基板温度を変化させることで表面拡散の程度を制御し,成膜圧力,RF出力によりスパッタ粒子の運動エネルギーを変え,微細組織(各元素の微細領域のサイズと分布)を変化させる.固溶体型Ti-Ca,Ti-Mg合金と同様の評価に加え,作製した複合体の微細組織を後方散乱電子回折 (EBSD) による分析,透過電子顕微鏡 (TEM) による観察により調べる.さらに,生体適合性評価を行う.
|
Causes of Carryover |
2021年度も当初,非常に高価なMg-Ca合金をターゲット材としてTi-Mg-Ca合金の作製を計画していたが,非常に安価なCa化合物をターゲット材として使用してTi-Ca合金を作製できたため,その分使用額が抑えられた.生じた次年度使用額は,スパッタ装置の改造やメンテナンス,必要な器具等の製作や共用分析装置の使用費等に使用する.
|