2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of structures of vacancy-solute clusters in aluminum alloys by first-principles calculations and statistical method
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20K05131
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 正隆 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50324801)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Al-Mg-Si / 第一原理計算 / 溶質クラスタ / 空孔 / Siリッチクラスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
時効硬化型Al合金ではAl空孔と溶質原子の相互作用が機械的特性に大きく影響する。本研究では、Al-Mg-Si合金における空孔の第一近接原子までを考慮した空孔-溶質原子クラスタの安定構造の解明に取り組んだ。Alマトリックス中の空孔の第一近接に存在する12原子を2種類の溶質原子で置換する場合の全ての配置に対して、申請者が開発したプログラムにより対称性を考慮して等価な配置をもつ構造を取り除くと独立な配置の数は11824通りとなる。これらの配置の中から溶質原子数が6と12の場合の全ての独立な配置について第一原理計算を行い、生成エネルギーを求め、空孔-溶質原子クラスタ中の各結合種の数を記述子として重回帰分析により決定係数0.977の生成エネルギーの予測式を得ることができた。配置の数が少ない溶質原子数が1~4の場合についてはすべての配置について、5~11の溶質原子数の場合については予測式を用いて、生成エネルギーの予測値が低い構造について第一原理計算を行い、生成エネルギーを求めた。有限温度による存在確率を考慮して、溶質原子数の増加に伴う濃度変化を調べたところ、溶質原子数2まではSi原子が増加し、溶質原子数2~4にかけてMg原子が増加、その後はどちらも増加するが、溶質原子数8以上になるとSi原子のみが増加するという結果が得られた。この結果は室温時効によるSiリッチクラスタの生成と対応するものである。また、溶質原子数の変化は実験により得られている陽電子寿命値の変化と対応するものであり、室温時効の初期過程における空孔-溶質原子クラスタの構造変化を明らかとなった。今後は更に溶質原子数が増加した場合の安定構造の解明について取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の課題であった空孔-溶質クラスタの生成エネルギーの予測式の作成は予定通り終了した。また、予測式の精度も十分なものであり、第一原理計算と統計的手法により、空孔と第一近接原子で構成される空孔-溶質原子クラスタの安定構造を解明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
考慮する溶質原子の範囲を拡張し第二近接以降の溶質原子も加えて、安定構造の解明を進めていく。第二近接以降の原子も加えた場合、独立な配置の数は急激に増加するため、初年度と同じ方法では予測式の作成が困難であることが予想される。そこで、空孔と溶質原子をランダムに配置した構造を1000通り程度計算し、統計的手法を用いて予測式の作成に取り組む。また、モンテカルロ法の併用による安定構造の探索も検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ渦の影響で出張がすべて中止になり旅費での支出がゼロになったため。翌年度はワークステーション購入費に充当する予定。
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