2021 Fiscal Year Research-status Report
Stabilization of highly oxidized states of transition metal ions for redox flow batteries
Project/Area Number |
20K05140
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
稲葉 稔 同志社大学, 理工学部, 教授 (80243046)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レドックスフロー電池 / バナジウム / チタン / マンガン / エネルギー密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在実用化が進められているバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)では、エネルギー密度の向上には電解液中のバナジウムイオンの高濃度化が有効であるとされるが、既存のH2SO4系電解液では高濃度化(1.7 M以上)により析出物が発生するという課題がある。2020年度は1,3-プロパンジスルホン酸(PDSH)+1,3-プロパンジスルホン酸バナジル(VOC3H6(SO3H)2電解液でVイオン濃度を2.5 Mまで高濃度化することに成功した。一方でこの電解液は粘度が高いという課題が示された。そこで本年度はPDSHにH2SO4を加えて低粘度化を図った。 種々の濃度のPDSV4++ PDSH + H2SO4系電解液を用いて熱安定性を調査した。2.00 M PDSV + 0.50 M VOSO4 + 3.00 M H2SO4では-5℃で4価V析出物が50℃で5価V析出物が168時間(2週間)経っても認められなかった。また、この溶液を用いた充放電特性を測定した結果、初回放電容量が52.95 Ah/Lとなり、従来の1.70 M VOSO4 + 3.00 M H2SO4電解液の初回放電容量(35.28 Ah/L)と比べて、約1.5倍エネルギー密度の増加を実証した。 一方、将来の低コストRFBとして期待されるTi-Mn系RFBに関しては、課題である正極電解液中でのMnO2の沈殿物生成抑制に関して研究を進めた。正極電解液中にTiOSO4を添加することで充放電サイクル中のMnO2沈殿物の微細化が可能になった。さらにMnO2沈殿物を安定化させるため、H3PO3 およびトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)を添加したところ、H3PO3 ではMnPO3 の沈殿が生成したが、TfOHではMnO2沈殿物がさらに微細化(20-30 nm)し、MnO2微粒子の安定化にTfOHが有効であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VRFBにおいては、昨年度見いだされたPDSV+PDSH電解液の高粘度という課題を、H2SO4を加えることにより低粘度化に成功した。また、Vイオン濃度も2.5 Mまで挙げることが可能となり、充放電特性評価の結果よりエネルギー密度を1.5倍向上できることを示すことができた。また、Ti-Mn系RFBではTfOHの添加効果により、正極電解液に生成するMnO2沈殿物の微細化に成功し、正極電解液の長寿命化が見込めることがわかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
1.VRFBのエネルギー密度向上に向けた電解液設計 今年度の研究によりPDSV+PDSH+H2SO4電解質を用いることで電解液の高濃度化が可能となり、その結果エネルギー密度の向上が可能であることを実証した。そこで、さらにエネルギー密度向上に向けて、鎖長の異なるアルキルジスルホン酸+アルキルジスルホン酸バナジル電解液+硫酸電解液を作成し、電解液の低温高温保存試験を行い、安定性の評価を行う。また、短期充放電試験を行い、クーロン効率、過電圧などの電気化学特性を評価する。電気化学特性と配位状態、粘度と充放電特性の関連性を明らかにするとともに、実用化に向けた課題を抽出する。
2.Ti-Mn系RFBの長期安定性およびエネルギー密度に向けた電解液設計 今年度明らかになったバナジウム5価イオンの安定化メカニズムをもとに、Ti-Mn系RFBの電解液にPDSH等のアルキルジスルホン酸などを添加して、課題であるマンガン3価イオンの不均化反応による沈殿物生成を抑制し、Ti-Mn系RFB電解液の高濃度化への指針を得る。
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