2021 Fiscal Year Research-status Report
混合粉をスタート材とする画期的金属積層造形法による疑似生体インプラントの開発
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20K05141
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Research Institution | Niihama National College of Technology |
Principal Investigator |
當代 光陽 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 准教授 (10610800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真中 俊明 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 講師 (60805068)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザ積層造形 / チタン合金 / 微細組織 / 集合組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨疾患は、患者の生活の質の低下、低余命化へとつながるため、超高齢化社会を迎えた我が国においては骨疾患への対策は急務であり、生体インプラント用金属材料の重要性および市場規模は増すばかりである。骨代替インプラントしてのTi合金は、その高い生体適合性と力学的信頼性から、臨床分野でも極めて重要な役割を担っている。 我々の研究グループは生体骨程度の低ヤング率と高弾性異方性を有する単結晶インプラントの開発を提案するとともにその試作に成功している。しかしながら、浮遊体溶融法を用いた単結晶インプラントの製造プロセスでは大きな形状の制限を受けるため、金属積層造形法により熱流方位を制御することで[001]方位に結晶の集合組織を発現させ、上述の課題を克服できると着想した。金属積層造形法(Additive Manufacturing)の一種であるレーザ積層造形法は迅速に個々の患者にカスタムメイドされたTi合金製のインプラント作製を可能とし、大きな注目を集めている。 レーザ積層造形法による合金造形体作製時には、造形前にあらかじめ所望の組成を有する合金粉末(Pre-alloyed粉末)を準備し、これを用いて造形体を作製するのが一般的である。この際、Ti合金をはじめとする合金粉末の作製には高度な技術力とコストがかかり、このことが、合金組成やこれに伴う合金特性の選択の幅を大きく制限している。本研究はこれまでの概念にとらわれず、スタート材として成分元素の混合粉末を用いて、レーザ積層造形時に「合金化(組成)」「形状」「微細組織(結晶配向)」を同時に制御し、β-Ti合金造形体の組成・形状・結晶配向を自在に操ることを目指す。混合粉をスタート材として、[001]方位に結 晶の集合組織を発現させ、低ヤング率を示すインプラントを設計する計画を立てた。2021年度は混合粉末から試作した造形体の組織観察や結晶構造解析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度までに(1) 純チタンとβ安定化元素 (Cr, Nb, Ta, Mo)との混合粉末を作製する。原料粉末は市販の粉末を使用し、粒度分布・平均粒径等を分析した後、混合機(既設)により約10 kgの混合粉を作製した。(2) EOS社製EOS290を使用し、(1) で作製した混合粉末からレーザ積層造形法にて造形体を作製する。この際、造形パラメータ( 印加電圧、電流、積層粉末幅、ビームピッチ、ビーム軌道など ) に着目しつつ造形体作製を行っている。本年度は計画を前倒しして、得られたTi-Nb合金およびTi-Cr合金造形体試料をアルキメデス法による密度測定、XRD測定とTEM観察による相構成の同定 ( 特にβ型Ti合金の脆化をもたらすω相の有無はTEM観察で確認する。)、SEM-EDX測定 ( 日本電子社製JSM-6500 ) による偏析の有無を確認し、以上の結果をプロセスマップとして整理した。このことから混合粉末からTi-NbおよびTi-Cr合金造形体の作製が可能であることを見出し、合金化に最適な条件も提案できた。加えて、XRD測定およびSEM-EBSD観察により集合組織化の可能性も見出した。以上の結果より当所の計画以上に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の研究グループでは独自の骨代替インプラント用β-Ti合金の設計指針を構築し、これに基づいて生体骨程度の低ヤング率と高弾性異方性を有する単結晶インプラントの開発を提案するとともにその試作に成功している。しかしながら、浮遊体溶融法を用いた単結晶インプラントの製造プロセスでは大きな形状の制限を受けるため、このことが患者一人一人に合ったカスタムメイド化に向けた大きな課題となっていた。本研究では成分元素の混合粉比率によって所望の組成(e/a)を選択し、ヤング率が最も低くなる[001]方位がβ-Ti合金の凝固時における優先成長方位と同じであることから、申請者がごく最近取り組んできた金属積層造形法により熱流方位を制御することで[001]方位に結晶の集合組織を発現させ、上述の課題を克服できると着想している。これまでの研究によって、合金粉末をスタート材として合金造形体の作製に成功しているため、最終年度は作製した合金造形体の微細組織と集合組織形成について調査し、造形時の熱流方向制御による集合組織制御化のメカニズム解明と、最適な造形パラメータを議論する。
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Causes of Carryover |
感染症による社会的状況下によって、2021年度は学会等の旅費は生じなかった。このため、翌年度(2022年度)において差額を請求し、効率的に執行する予定である。本研究の最終年度であることから、成果発表等の旅費に使用する予定である。
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Research Products
(12 results)