2021 Fiscal Year Research-status Report
異種元素を添加したBi系複合酸化物顔料の低温合成と発色性能の向上
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20K05142
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
松嶋 茂憲 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 教授 (80229476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小畑 賢次 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (70370046)
大川原 徹 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (50632650)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Bi系複合酸化物 / パイロクロア型構造 / 環境調和型セラミックス / 黄色系無機顔料 / Bi2Zr2O7 微粒子 / 第一原理バンド計算 / 錯体重合法 / Vドープ |
Outline of Annual Research Achievements |
R3年度は、Bi2Zr2O7(BZO)粒子の調製とキャラクタリゼーション,異種元素をドープしたBZOとBi2Ti2O7 (BTO)に関する第一原理分子動力学計算と全電子バンド計算に注力した。錯体重合法で得た前駆体を空気中750 ℃で焼成すると、少量のZrO2が含まれるが、高純度のBZO相が生成した。BZO粉体のバンドギャップは、UV-vis測定より2.38 eVと見積もられ文献値と一致した。BZOにVを添加すると主相がγ-Bi2O3へと変化し、少量のZr2V2O7やZrO2が混在した。この状況は、Vの添加量を変えた試料でも同様であった。Vを添加した試料ではバンドギャップが拡大し、γ-Bi2O3の2.8 eVと一致した。L*a*b*色度測定では、黄色度を示すb*値がBZOへのV添加によって減少した。第一原理計算は、R-doped BTO (R = Mg, Ca, Sr, Ba), (R, V)-doped BTO, R-doped BZOおよび(R, V)-doped BZOについて、一般化密度勾配法(GGA法)の枠内で実施した。TiをVで置換すると、BTOやBZOのバンドギャップ中にV 3dに起因する不純物準位が形成された。BTOでは、Rの中でもCaをVと共添加すると価電子帯頂上近傍のO 2pの状態密度がV単独添加の場合よりも大きくなった。これは、V-O間の電荷移動型吸収がCa添加によって増強されることを示唆する。同様の傾向は、(R, V)-doped BZOに関しても認められた。よって、Vを添加したBTOやBZOの発色は、Caの共添加で向上することが期待されるが、BTOやBZOに発色性を高めるためVを添加すると、これらの結晶相が減少または消失する。このため、BTOやBZOの安定性を高める異種元素の添加が不可欠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
錯体重合法により、高純度のBZO粒子が生成することを確認した。BZOの発色性を高めるためV添加を試みたが、BZOが不安定になることがわかった。第一原理バンド計算では、V-doped BTOやV-doped BZOへのアルカリ土類元素の共添加、特にCaが発色度の向上において有望であることを見出した。第一原理計算では重要な知見が蓄積されつつあるが、母相であるBMOの安定性の改善という新たな課題が見出されたため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、高純度なBi2Ce2O7 (BCO)および異種元素をドープしたBCO粒子の合成と物性測定,第一原理計算に取り組む。並行して、V-doped BTOやV-doped BZOを安定化させる異種元素の探索を行う。物性測定では、異種元素の存在状態について原子レベルでの知見を得るため、透過型電子顕微鏡観察およびラマン分光測定を検討する。また、試料の微細構造と発色特性の相関性について調査する。第一原理計算では、単独および複数種の異種元素をドープしたBCOスーパーセルを構築し、構造最適化および全電子計算を行う。さらに、励起状態を考慮した分子軌道計算により、Vを添加した試料の発色機構について知見を得る。理論計算によって蓄積された知見と実験結果を比較検討し、黄色発色性に優れたビスマス系複合酸化物粒子の創製を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)研究を遂行する上での大きな問題点は、生じていない。 (使用計画)試薬等の消耗品代として使用予定である。
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Research Products
(10 results)