2023 Fiscal Year Annual Research Report
異種元素を添加したBi系複合酸化物顔料の低温合成と発色性能の向上
Project/Area Number |
20K05142
|
Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
松嶋 茂憲 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 教授 (80229476)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小畑 賢次 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (70370046)
大川原 徹 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (50632650)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | Bi系複合酸化物 / Bi4Ti3O12 / 環境調和型セラミックス / 第一原理バンド計算 / 固体電子構造 / 状態密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、令和2年度に得られたBi4Ti3O12(BTO)が熱力学的に安定であるという実験結果に注目して、BTOが無機顔料として応用可能かどうか知見を得るために第一原理計算を実施した。まず、理論的な格子定数と原子座標を得るために、擬ポテンシャル法に基づくCASTEPプログラムによる第一原理分子動力学計算を実施した。引き続き、詳細な固体電子構造を明らかにするために、バンド計算法の中で最も高精度なFLAPW+lo法を採用したWIEN2kプログラムによる第一原理バンド計算を行った。これらの計算では、交換相関相互作用は一般化密度勾配法(GGA)の枠内とした。その結果、価電子帯頂上(VBM)は第一ブリルアンゾーンのY-Γ線上にあり、伝導帯底部(CBM)はΓ点であった。このことはBTOの光学遷移が間接型であることを意味する。またBTOの最小バンドギャップは2.50eV(文献2.57eV)と見積もられ、黄色の無機顔料として有望である。BTO中には、2種類のBi原子(Bi1とBi2)と2種類のTi原子(Ti1とTi2)が存在し、第一原理分子動力学計算からBi1-OとBi2-Oの平均結合距離は0.2647nmと0.2851nmと見積もられた。VBMにはBi6s状態に起因する局在状態が出現するが、Bi2よりもBi1の方がより高エネルギー側に局在化した。一方、Ti1-OとTi2-Oの結合距離は各々0.1966nmと0.2007nmであった。Bi1-OやBi2-Oの結合距離と比較すると、Ti1-OとTi2-Oの結合距離が短かく、BTOの安定性に強く寄与するが、VBMはBi6s状態に支配され、CBMにO2pに寄与する。このことはBTOの光学吸収がBi-O間の相互作用に支配され、その制御が顔料の発色特性において重要であると考えられる。
|