2020 Fiscal Year Research-status Report
Tailored sintering of inorganic solid electrolyte by external electric field
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20K05151
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉田 道之 岐阜大学, 工学部, 助教 (70431989)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フラッシュ焼結 / 無機固体電解質 / 微構造制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
安全性と高エネルギー密度を兼ね備える次世代エネルギー貯蔵デバイスとして、酸化物系固体電解質を用いた全固体電池が注目されている。酸化物系固体電解質を電池に適用する際には「やきもの」と同じ原理で焼き固める必要があるが、高温・長時間の処理を要する従来の焼成法では、活物質の揮発や第2相の形成により高い伝導性を示す焼結体を得るのが難しい。近年、注目を集めているフラッシュ焼結は、外部電場の印加条件によりサンプルの自己発熱を制御することが可能であり、数秒から数分の極めて短い時間スケールで多様な微構造をテーラーメイドで形成することができる特異なプロセスである。本研究では、Liイオン伝導性を示す酸化物系固体電解質LAGP (Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4))のフラシュ焼結において、外部電場の印加条件が緻密化挙動と微構造形成に及ぼす影響を検討し、焼結体の微構造とイオン伝導特性の相関関係を明らかにする。 ペレット状のサンプルを電気炉で加熱しながら交流電場を印加し、アルミナロッドを介してサンプルの収縮を計測する装置を開発した。開発した装置を用いて、LAGPのフラッシュ焼結の再現に成功した。LAGPのフラッシュ焼結において、印加電場が焼結体の特性(密度、結晶相および微構造)に及ぼす影響を明らかにした。以上の結果をまとめ、国内の学会で発表した。 これと並行して、フラッシュ焼結のメカニズムに関する研究を、ジルコニアをモデル材料として行なった。ジュール加熱の熱暴走という観点からフラッシュ焼結のメカニズムに関する検討を行い、その内容を解説にまとめ学会誌に発表し、国内の学会で発表した。原料粒子サイズが10nm(従来の1/5程度)の材料でフラッシュ焼結を行い、原料粒子サイズがフラッシュ焼結に及ぼす影響を検討し、結果を国内の学会および国際学会で発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の実施計画に沿って研究を行い、以下に示す結果を得た。 ペレット状のサンプルを電気炉で加熱しながら電場を印加し、アルミナロッドを介してサンプルの収縮を計測する装置を開発した。開発した装置を用い、直流および交流のいずれにおいても無機個体電解質LAGPのフラッシュ焼結の再現に成功した。直流電場のフラッシュ焼結では熱暴走によりサンプルが溶融し、焼結体が大きく変形したが、交流電場では直流電場で観察されたような変形は起こらず、均一な焼成体を得ることに成功した。LAGPのフラッシュ焼結において交流電場の有効性を明らかにした。電場を印加しない通常の焼結を行い、焼成温度と密度および微構造の関係を明らかにした。 イオン伝導特性を評価するための備品としてイオンインピーダンスアナライザーを購入したが、標準サンプルの入手が遅れたため、令和2年度に計画をしていた周波数特性を評価するためのノウハウを確立することはできなかった。一方で令和3年度に計画していた内容を前倒しで行い、フラッシュ焼結における印加電圧が焼結体の特性(密度、結晶相および微構造)に及ぼす影響を明らかにした。 以上を踏まえると、研究は計画通り順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
R2年度の国内の学会で発表した研究成果を論文にまとめ、2021年の秋を目処に焼結関連の学術誌への掲載を目指す。論文に関して専門家から頂いた意見を次年度以降の研究計画にフィードバックさせる。 イオン伝導の周波数特性の計測および解析について専門家に助言を求め、ノウハウの確立に努める。フラッシュ焼結により形成されたLAGP焼結体の微構造とイオン伝導特性の相関関係を明らかにする(R3年度実施計画)。R3年度の研究成果を2022年の春の国内の学会で発表し、学術誌への投稿の準備を行う。 新型コロナウィルスに関連する国内および国外の状況を鑑み、可能であればR3年度までの研究成果をR3年度内に国際学会で発表し、研究成果を国外にアピールすることで研究の更なる加速を目指す。 R3年度までの研究で浮き彫りとなった課題を整理し、最終年度の研究のまとめに備える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、国内および国外での学会がオンライン開催となり、予算として計上していた旅費が年度内に消化できなかったため。
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