2021 Fiscal Year Research-status Report
Tailored sintering of inorganic solid electrolyte by external electric field
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20K05151
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉田 道之 岐阜大学, 工学部, 助教 (70431989)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 無機固体電解質 / 焼結 / 微構造制御 / イオン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の研究において、ペレット状のサンプルを電気炉で加熱しながら交流電場を印加し、アルミナロッドを介してサンプルの収縮を計測する装置を開発した。開発した装置を用いてLAGPのフラッシュ焼結を試み、印加電場と焼結体の微構造の関係を明らかにした。令和2年度に得られた研究成果を論文にまとめ、焼結関連の学術誌に投稿し、掲載された。 令和2年度の研究において、汎用的な交流電源により外部電場を印加してLAGPの焼結を行うと電力の急峻な変化によりサンプルが溶融し、高密度の焼結体が得られないことが分かった。研究成果を論文化する際に浮き彫りになった課題を解決するために、新たな備品としてバイポーラ電源を購入した。これを用いることで、外部電場の精密な制御が可能となり、高密度の焼結体が得られると期待される。 外部電場の印加により誘発されるジュール加熱により数百度/秒という極めて速い昇温と数秒の保持で焼結が完了するフラッシュ焼結のメカニズムを検討するために、ジルコニアをモデル材料として電気特性と焼結挙動の関係について検討を行った。イットリア安定化ジルコニアのフラッシュ焼結における電気特性を精密に計測するためのノウハウの検討を行ない、フラッシュ焼結の焼結緻密化に伴う抵抗率の変化を明らかにした。得られた研究成果を国内の学会で発表した。この結果をもとに、ジュール加熱の熱暴走という観点からフラッシュ焼結のメカニズムに関する考察を行い、その内容を解説にまとめ学会誌に発表した。 イオン伝導の周波数特性の計測および解析について専門家に助言を求め、ノウハウを確立し、電場を印加しない通常の電気炉加熱の焼結において形成される多様な微構造とイオン伝導特性の関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の実施計画に沿って研究を行い、以下に示す結果を得た。 通常の電気炉加熱による焼結を行い、LAGPの焼結における微構造形成に関する検討を行った。対象とする試料は、原料を所定の温度で加熱後、急冷して得た非晶質粉末および非晶質粉末を熱処理により結晶化させ、粉砕により得られた結晶質粉末の2種類とした。 結晶性試料の結晶相は、1000℃までの温度範囲では熱的に安定であることが分かった。結晶性試料の出発粉末は、比較的大きな粒子と小さな粒子が混在したバイモーダルの分布であるが、800℃以上で焼成すると著しく粒成長するのと同時にサイズが均一化することが分かった。一方、非晶質試料は、600℃以下では非晶質特有の不定形な粒子形態をとり、さらに高い温度で焼成するとLAGPの結晶が生成し、サイズの揃った多面体粒子となることが分かった。結晶性試料の焼結では900℃で最も高い密度(79%)に到達した。一方、非晶質試料の焼結では、900℃で最高密度(91%)に到達するが、1000℃では減少に転じた。 令和2年度に計画をしていた交流インピーダンス測定のノウハウの確立を行い、通常の電気炉加熱で得られたサンプルのイオン伝導特性の評価を行った。その結果、1000℃で焼成した結晶性試料のイオン伝導度が最も高い値となることが分かった。非晶質試料では900℃で最大値をとるが、1000℃では低下に転じることが分かった。微構造評価の結果から、非晶質試料を1000℃で焼成すると、多数の気孔が生成することが分かり、これによりイオン伝導度が低下したと考えた。 以上の結果から、通常の電気炉加熱の焼結で形成される多様な微構造とイオン伝導特性の関係を明らかにすることができ、研究は概ね計画通り順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究成果である、通常の電気炉加熱による焼結で形成されたLAGP焼結体の微構造とイオン伝導特性の相関関係について、2022年の秋に国内で行われる学会で発表し、学術誌への投稿の準備を行う。 令和2年度の研究において、汎用的な交流電源により外部電場を印加してLAGPの焼結を行うと電力の急峻な変化によりサンプルが溶融し、高密度の焼結体が得られないことが分かった。令和2年度の研究で浮き彫りになった課題を解決するために令和3年度に購入した備品(バイポーラ電源)を用いることで外部電場を精密に制御し、LAGPの焼結および微構造形成における外部電場の影響の詳細な検討を行う。外部電場のアシストによる焼結で形成された微構造とイオン伝導特性の相関関係を明確にし、高いイオン伝導を示すLAGP焼結体を作製するための指針を得ることを目指す。 国内および国外における新型コロナウィルスの感染拡大状況を鑑み、可能であれば令和3年度までの研究成果を令和4年度内に国際学会で発表し、研究成果を国外にアピールすることで研究の新たな展開を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、国内および国外での学会がオンライン開催となり、予算として計上していた旅費が年度内に消化できなかったため。
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