2020 Fiscal Year Research-status Report
高規則性ナノスルーホールメンブレンの作製と機能的応用
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20K05171
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
柳下 崇 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (50392923)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 陽極酸化 / スルーホールメンブレン / 高規則性 |
Outline of Annual Research Achievements |
TiおよびNbの陽極酸化において,各種陽極酸化条件が皮膜の溶解性に与える影響について検討を行った.その結果,フッ化アンモニウムを含むエチレングリコールを基本とした電解液に,硫酸を添加すると皮膜の溶解性が高くなることを見出した.これは,陽極酸化ポーラスアルミナに見られたように,電解液中の硫酸アニオンが酸化皮膜の内部に取り込まれることによって引き起こされていると考えている.この時の皮膜の溶解性は,電解液に添加する硫酸濃度に依存して変化し,より硫酸濃度が高い方が得られる皮膜の溶解性が高くなることがわかった.この結果に基づいて,硫酸を含まない電解液と硫酸を含む電解液を用いた二層陽極酸化によって,溶解性の異なるポーラス皮膜が積層した構造の作製に成功した.得られた皮膜にエッチング処理を施すことによって,皮膜底部を選択的に溶解除去され,溶解性の低いポーラス層からなるメンブレンが得られることを見出した.また,皮膜底部のエッチングを行う際に,クロム酸とフッ酸を含むエッチャントを用いると,残存地金を溶解することなく酸化皮膜のみを選択的に溶解除去できることがわかった.これは,クロム酸の酸化力により,地金表面に不働態膜が形成されるためであると考えられる.これによって,皮膜底部の細孔配列に対応した窪みパターンを地金素地表面に保持することが可能となった.このような窪みパターンは,再陽極酸化の際に細孔発生の開始点として機能することから,陽極酸化条件の最適化によって規則的なスルーホールメンブレンを繰り返し作製することが可能になると期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り順調に進行していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の検討において,Al以外の金属素材の陽極酸化の際においても電解液の種類が得られる皮膜の溶解性に影響を与えることが確認され,二種類の電解液を用いた二層陽極酸化によってスルーホールメンブレンが得られることを明らかにした.2021年度の検討では,細孔が規則的に配列したスルーホールメンブレンの繰り返し形成を目標に検討を進める.また,得られたメンブレンの機能的応用として光触媒能にもとづく有機物分解フィルターへの利用を計画しており,本年度は,その予備検討として,剥離処理を施したスルーホールメンブレンの光触媒特性について評価を進める予定である.
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Causes of Carryover |
2020年度前半は,コロナ禍の影響により研究活動が止まってしまったため,消耗品等の執行額が当初の計画以下であったことに加え,国内外の出張が一度もなかったために旅費の執行もなかった.このため,当初計画に比べて2020年度は執行額が少なかったが,研究の進捗に大きな遅れはなかった.2020年度の未執行分と2021年度の助成金を合わせて,当初計画の世織,様々な素材からなる高規則性するホールメンブレンの形成と幾何学構造制御を中心に検討を進める予定である.
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