2021 Fiscal Year Research-status Report
アルミニウム合金で観察された新奇な電磁分離現象の発現条件とその理解
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20K05184
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
田村 洋介 千葉工業大学, 工学部, 教授 (40316807)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凝固組織 / 電磁力 / 初晶 / 核生成 / 偏析 |
Outline of Annual Research Achievements |
電磁力を印加しながら凝固させたAl-10FeおよびAl-25Si合金の組織観察を通じ,Al-10Fe合金で確認された初晶Al13Fe4の電磁分離現象を検証し,併せて各合金の凝固組織に及ぼす電磁力の影響を明らかにした。またAl-10Fe中の初晶Al13Fe4に限らず,Al-25Si中の初晶Siも電磁力により試料表層に偏析することを確認した。また試料の配置を横型から縦型に変更してもその効果は変わらないことを明らかにした。初晶Al13Fe4および初晶Siの偏析は,それらが試料表面から遊離することなく試料表層の狭範囲で緻密に成長した結果であり,電磁力は溶湯中にすでに遊離している初晶Al13Fe4や初晶Siに作用することはなく,それらの分布にも影響を及ぼさないことを示した。以上の研究成果より,本研究で確認された初晶の偏析は,既存の電磁分離によるものではなく,核生成と結晶成長に係る全く新しい現象であると結論した。 Al-Si合金の場合,さらに電磁力の印加によって凝固過程で溶湯表層に初晶Siが偏析すると,初晶Siを含まない試料中央領域は過冷凝固組織の様相を呈し,樹枝状の初晶Alを伴う微細共晶が観察されることを示した。試料の冷却速度(約1℃/s)は,金型鋳造等に比べると著しく小さく,また研究に用いた合金は市販純度のものであることから,冷却速度の小さい試料中央領域で大きな過冷が起こるとは考え難い。初晶Siの試料表層への偏析現象と同様,共晶組織に及ぼす電磁力の効果についても今後の応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度に導入した実験装置は,電気炉とネオジム磁石を重ねた構造であり,これらを同時に電動昇降させることで,試料を炉内および磁極間にそれぞれ配置できる設計とした。当初は一方向凝固も兼ねた装置を予定していたが,構造上,その機構を設けることは困難であることが明らかとなった。また電気炉の性能が,実験条件を満たす上で不十分であったため,設置後,発熱体の交換を行った。そのため,装置を十分に活用するまでに時間を要した。以上が当初予期していなかった点である。現在は,研究目的を達成する上で十分な装置に改良できており,その成果も得られつつある。従って概ね順調な方向で進展し始めている。しかし当初の予定を鑑みると,全体的にはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,不透明なムライト管中でAl-Si合金等を溶解してから電磁場を印加し,凝固組織観察を通じて電磁分離現象の理解を試みている。令和3年度に導入した実験装置を利用すると,さらに電磁場印加中の溶湯の動きを観察できると考えている。例えば透明石英管中でSn等の低融点金属を溶かし,電磁力により溶湯の動きを観察できれば,電磁場が湯の動きを助長するのか,それとも逆に湯の動きを抑制するのか等,凝固組織以外の観点からも電磁分離現象に関する知見が得られ,理解が深まると考えている。
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Causes of Carryover |
(1) 電極用黒鉛の在庫不足により,納期の問題から購入を見合わせたため。 (2) 実験装置の設計・仕様の見直しを行った結果,当初の予定よりも安く購入できたため。
(1)については,予定通り黒鉛の購入,(2)については論文掲載費用等に使用予定である。
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Research Products
(2 results)