2020 Fiscal Year Research-status Report
Dynamic analysis of evaporation of charged nanodroplets and formed ions
Project/Area Number |
20K05189
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
東 秀憲 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (40294889)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 液滴 / 帯電 / イオン / 蒸発 / 速度 / 分子動力学 / 理論 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本提案では、静電噴霧法等を利用した各種装置の最適設計および操作条件の最適化の指針を得ることと帯電液滴蒸発過程の学理深化を目的とする。また、同一研究者により①実験・②理論・③分子シミュレーションの3つの方法により得られる知見を相互に活用し(三位一体のアプローチ)、現象の解明に取り組む。そして、各方法から得られる情報により、静電噴霧法により生成する多価帯電液滴の蒸発・分裂過程とそれに伴い発生するイオンやナノ粒子の生成過程、および発生したイオンの形態および動的挙動(電気移動度等)について解析し、実験では得られない微小時間の液滴の挙動や、理論に反映できていない液滴変形の影響等を考慮することで、分子と粒子をつなぐユニバーサル理論を構築する。 これまでに、帯電液滴の蒸発ダイナミクスとして、真空中に配置したモデル帯電液滴の蒸発過程の分子動力学(MD)シミュレーションにより、蒸発速度の検討を行った。過熱状態で蒸発を促進し、液滴径の経時変化を計測することで、帯電液滴の蒸発速度を見積もり、実験結果と比較した。また、ナノ粒子とイオンの動態解析として、大気圧窒素雰囲気下で、帯電した鎖状高分子イオンのMDシミュレーションを行い、気相中のイオン形態の可視化と電気移動度の算出を行った。大気圧窒素雰囲気(温度298 K)を想定した周期境界立方体セル中に、溶質分子を1個配置し、xyz方向に10 kV/cmの電界を印加したシミュレーションを行い、電気移動度の実験値と比較し、気相中電気移動度に及ぼすPEGの形態変化の影響について検討した。さらに、所属機関の異動に伴い、噴霧乾燥法による発生装置および計測装置などの実験系の構築と帯電液滴の蒸発速度(=液滴径変化)の理論計算についてモデルの検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴う活動制限に加えて、年度途中に所属機関の異動による引っ越し作業による中断があり、予算の執行可能時期が短くなったこと、さらに、この異動によりスタッフや現有機器等に予期せぬ変更が生じ、特に実験において発生装置や計測機器の整備・確認をする必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
所属機関の異動に伴い、使用可能な設備やエフォート的にも修正が必要なことも考えられるため、研究内容等も含めて可能な範囲で対応しながら遂行していく。 実験および理論解析においては、帯電液滴の蒸発ダイナミクスとして、液滴生成法を静電噴霧法に限定せずに帯電状態が液滴の蒸発速度に及ぼす影響を考察する。比較的蒸気圧の低い溶媒を用いて帯電液滴を発生して加熱管を通すことで蒸発を促進し、液滴径の減少速度(蒸発速度)の測定を行う。さらに、シミュレーション結果を考慮したユニバーサル理論を構築することで、液滴径および帯電数による蒸発速度の制御あるいはイオンやナノ粒子の生成タイミングの制御のための知見を得る。 ナノ粒子とイオンの動態解析としては、異動に伴い新規データの取得は困難となったため、既得の結果をもとにPEGイオンの形態を仮定した理論計算の結果と比較し、帯電数とPEGイオンの形態の関係、さらにそれらが電気移動度に及ぼす影響について考察を進める。また、分子シミュレーションの結果を理論へ反映し、帯電液滴の蒸発・分裂過程の解析とその結果として生じるイオンとナノ粒子の帯電量と電気移動度の相関を試みる。 分子シミュレーションでは、引き続き帯電液滴の蒸発速度について理論式には考慮されていない変形や電荷の偏り等の因子について検討するとともに、ナノ粒子とイオンの動態解析に関しては、気相中電気移動度に及ぼすPEGの形態変化の影響について検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大における活動制限に加えて、年度途中での所属機関の異動に伴い引っ越し作業などにより経費の執行可能な時期が限られたこと、さらに、この異動によるスタッフおよび所有する研究機器の変更に伴い、実験設備を拡充する必要があり、当初の予定と執行計画を変更したため、当該助成金が生じた。なお、生じた助成金は翌年分として請求した助成金と合わせて主に実験機器の消耗品および必要な試薬等の費用として使用する予定である。
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