2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of coalescence process of microemulsion using super-lipophilic nanofiber membrane
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20K05191
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
向井 康人 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30303663)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノファイバー膜 / エマルション / コアレッサー / ポリプロピレン / 微小油滴 / 合一分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
親油性が高いポリプロピレン製のナノファイバー膜を組み込んだ精密なコアレッサー(油滴合一器)を新たに導入し,本法の有用性を検証するため,従来のコアレッサーでは分離困難な10μm以下の微小油滴を含む水中油滴型(O/W)エマルションの合一分離特性を評価した.ナノファイバー膜の坪量(厚さ)が微小油滴の合一分離特性に及ぼす影響を調べたところ,坪量の増加とともに分離度が大きく増加したが,ある坪量以上では分離度の増加はごくわずかであった.高精度な油水分離を行うにはある程度の坪量が必要であるが,それ以上に坪量を大きくしても効果は小さいことがわかった. 本法における油水分離メカニズムを究明するため,ポリプロピレンナノファイバー膜を通過する微小油滴の挙動を観測した.通液を開始した直後,少しの間は油滴のほぼ全量が捕集されたが,その後,徐々に油滴が漏出するようになった.この通液区間では,捕集された油滴による繊維表面の油膜形成が進行していると考えられる.通液初期において,膜内に運ばれた油滴が複雑な三次元ネットワーク構造の中を移動する過程で親油性の繊維表面に強く引き寄せられ,繊維表面上で油滴同士が合一して薄い油膜を形成する.繊維全体が油膜で被覆されたら,後続の油滴が油膜に衝突し,油膜に取り込まれて油膜が徐々に成長する.しかし,一部の油滴は油膜に取り込まれずに,膜出口より漏出する.ある通液量に達したところで,それ以降,出口液から数mmの粗大な油滴の発生と浮上が観察されるようになった.油膜の成長が十分に進行し,これ以上繊維が保持しきれなくなったため,油膜に新たな油滴が取り込まれた分,膜出口から油膜の一部が押し流され,排出されるようになったと考えられる.排出され浮上した粗大油滴は,液面でさらに合一して油層を形成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のコアレッサーは10μm以下の微小油滴を含むO/Wエマルションの処理には不適とされており,出口液の水層に10μm以下の微小油滴が多量に残存してしまうケースが問題視されている.このため,10μm以下の微小油滴も合一・粗大化させることができる高精度なコアレッサーの創出が切望されている.それに応えるため,本研究では,微小油滴を含むO/Wエマルションを処理するための高性能な油滴合一材として,親油性のポリプロピレン製ナノファイバー膜に着目し,従来合一分離が困難であった10μm以下の微小油滴を高精度に処理できる油水分離方法の開発を行った.その結果,本法は10μm以下の微小油滴に対して優れた油水分離性能を有し,2μmまでの油滴はほぼ完全に分離可能であることを確認した.ナノファイバー膜の坪量を増加させて通液すると油滴の分離度は増加し,最大で約90%の分離度を達成した.また,通液過程における油滴の分析結果に基づき,油滴合一のメカニズムを明らかにした. 以上の研究成果は初年度末までの達成目標であり,実際に達成したことから,おおむね順調に進展していると自己評価することができる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに達成した油滴の分離度は最大90%程度で最終年度の目標99%以上にはまだ遠く,特に2μm以下の油滴の分離が不十分であった.また,これまでは簡易的なフィルターテスト用の通液システムによる実験的検討であったが,実用化を目指すためには連続式システムの導入が必須である.そのため,さらなる高精度化と高効率化が今後の課題であり,その課題の解決を目指して装置や操作方法の改善を図る予定である. 具体的には,定量送液ポンプを用いて連続式ナノファイバーコアレッサーを設計・製作し,高速供給条件下での連続合一操作を試みる.出口側には浮上分離槽を設置し,油相と水相とを効率的に分離できるよう工夫する.これまでの測定項目に加え,コアレッサー前後に圧力計を設置し,繊維表面への油膜の形成や繊維層内部での油滴の滞留による圧力損失の上昇データも収集する.本装置による一連の実験データを集約し,ナノファイバー膜およびO/Wエマルションの特性と本装置による油滴の合一分離特性との関係について考察して,さらなる高精度化と高効率化を図る.
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Causes of Carryover |
研究目的を達成するのに適したナノファイバー膜を作製するためには,現有の電界紡糸装置に加えて,よりスペックの高い電界紡糸装置の導入が必要であることがわかった.そこで,その購入に充てるためのまとまった資金を次年度に繰り越すこととした. 既に機種を選定して発注し,5月に納入予定である.
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Research Products
(10 results)
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[Book] 不織布の最新開発動向2020
Author(s)
矢井田修監修,著者多数(向井康人分担執筆)
Total Pages
307
Publisher
シーエムシー出版
ISBN
978-4-7813-1597-3
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