2020 Fiscal Year Research-status Report
昇温型ゾル-ゲル転移挙動を示す新規高分子ゲル化剤の1ステップ合成
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20K05197
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
森貞 真太郎 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (60401569)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 昇温型ゾル-ゲル転移 / ナノゲル / ゲル化剤 / 1ステップ合成 / 乳化重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
親水性セグメントと疎水性セグメントからなるトリブロックコポリマーの中には昇温型ゲル化剤として働くものがある.我々はこれまでに,sodium dodecyl sulfate(SDS)を用いた乳化重合によって1ステップで作製したN-isopropylacrylamide(NIPAM)とN-tert-butylacrylamide(TBAM)からなるコポリマーナノゲルの水分散液が,昇温によってゾル-ゲル転移することを見出している.既報のトリブロックコポリマーと同様に昇温型ゾル-ゲル転移を起こすことから,得られたナノゲルはTBAMを主としたブラシ部とNIPAMを主としたコア部を有していると推測される.そのようなブロックライクな構造が乳化重合の1ステップで形成されるメカニズムを検討するため,SDS添加から重合開始までの時間(調整時間)を変えたナノゲルを作製し,分散液濃度と温度に対するゲル化挙動を比較検討を行った.その結果,調整時間が長くなるほどゲル化温度の低下がみられた.これは,調整時間を長くすることで,ブラシ部において疎水性であるTBAMの割合が高くなったためだと考えられる.この結果から,P(NIPAM-TBAM)ナノゲルの形成メカニズムか次のように推測される. ①SDSが形成するミセル外部で主にNIPAMからなるゲルコア部が形成される. ②NIPAMメインのゲルコア部がミセル内部に取り込まれる. ③あらかじめミセル内部に取り込まれていたTBAMとコア部との重合が進行することでTBAMメインのブラシ部が形成される. このように,P(NIPAM-TBMMA)ナノゲルがブロックライクな構造を有することを間接的に示すことに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた研究実施計画に沿って検討を行い,ほぼその目的を達することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,分光学的手法によって合前後の溶液の分析することでP(NIPAM-TBAM)ナノゲルがブロックライクな構造を有することを直接的に示すことが可能であるか検討を行う.また,熱分析および粘弾性解析によって本系のゾル-ゲル転移挙動についての詳細な検討も実施する予定である.
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍のために学会の中止も多く,開催されたものも全てオンラインであったことから旅費での予算使用が無く,少額の次年度使用額が生じることとなったが,次年度予算と合わせて,適切に使用する予定である.
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