2021 Fiscal Year Annual Research Report
正常時運転履歴データを活用した化学プラントの分散協調型運転監視システム
Project/Area Number |
20K05211
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柘植 義文 九州大学, 工学研究院, 教授 (00179988)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 正常運転データ / 予兆検知 / 劣化現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,酢酸ビニルモノマー(VAM)の製造プラント(VAMプラント)を対象して,2021年度は制御系の不調として代表的な操作端の劣化(調節弁のつまり)と検出端の劣化(測定バイアス)について検討した. まず,プラント内には制御系が多数存在するので,制御系毎に状態を監視するシステムを構築した.具体的には,制御系毎に監視ユニットを定義し,主成分分析(PCA)を用いた多変量統計的プロセス管理(MSPC)を適用した.監視ユニットは各制御系の検出端に影響を及ぼす変数群(他制御系の開度指示値を除く)で構成し,それらの変数を用いたPCAにおけるT2統計量とQ統計量の内,相関関係の崩れを表すQ統計量に着目した. 操作端の劣化(調節弁のつまり)が発生すると,当該制御系の監視ユニットのみでQ統計量の値が大きくなった.また,MV値のQ寄与率がほぼ100%に近い値を取ることが分かった.複数の制御系で調節弁のつまりが発生した場合も,個々の制御系で調節弁のつまりが発生した場合を重ね合わた結果に一致することが分かった. 一方,検出端の劣化(測定バイアス)が発生すると,バイアスを含んだ測定値が制御設定値になるように制御されるために,制御量の測定値は見かけ上は設定値であるが,制御量の真値はバイアス分だけズレた値になり,制御系外に影響が伝搬するために,他の制御系の監視ユニットのQ統計量まで大きくなった.従って,Q統計量の値だけでは検出端が劣化している制御系を特定することはできなかった.そこで,変数の偏移がプロセス内を伝播する状況を定性的に表現する「不調伝播モデル」,さらに,伝播状況をさらに助長と抑制に区別した「符号付有向グラフ」と組み合わせて評価することにより,検出端が劣化している制御系を特定もしくは絞り込めることを明らかにした.
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