2020 Fiscal Year Research-status Report
CHEMOTHERAPY AND DETECTION OF CANCER USING HYBRID LIPOSOMES
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20K05239
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
市原 英明 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (70369114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 陽子 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (00133562)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハイブリッドリポソーム / インドシアニングリーン / 低侵襲的診断 / セラノスティスク |
Outline of Annual Research Achievements |
がんに対する治療法の1つとして抗がん剤を用いた化学療法がおこなわれるが、重篤な副作用が問題になっている。そこで、効果的で副作用のない抗がん剤の開発が求められている。また、早期にがんを検出し、生存率を改善することは最も重要ながん治療の試みであるが、これらの診断方法には被爆や検出感度などの問題点があり、簡便で正確性の高い診断方法が必要である。適度な流動性をもつHLは、細胞膜流動性の低い正常細胞には作用せず、細胞膜流動性の高いがん細胞にのみに選択的に融合することが明らかになっている。この正常細胞に作用せず、がん細胞のみに選択的に融合・蓄積するHLの性質を利用し、抗がん剤を全く含まないHLを用いて、がんの中でもとりわけ悪性度の高い大腸がんおよび乳がんに対する効果的な化学療法を目指す。さらに、近赤外波長を持つ蛍光試薬(インドシアニングリーン(ICG)含有HL(ハイブリッドリポソーム)/ICG)を用いて、早期がん検出とメカニズムを明らかにし、非侵襲で体に負担のないがんの診断薬を開発することを目的として研究を進める。 (1) 素材として無毒性のリン脂質とPEG系直鎖型界面活性剤を構成成分とするHLを用い、(2) がん治療を目指し、in vitroおよびin vivoにおけるヒト大腸がんおよび乳がんに対する治療効果、アポトーシス誘導メカニズムを検討する。(3) がん検出を目指し、in vitroおよびin vivoにおけるHL/ICGのがん細胞および腫瘍への蓄積観察とメカニズムの解明を試みる。さらに、正常動物に対する安全性試験、体内動態試験を実施する。また、腫瘍へHL/ICGが集積した後に近赤外光を照射し、活性酸素および熱の発生による光線力学的がん治療への応用も試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、抗がんを全く含まないHLを用いて、がんの中でもとりわけ悪性で転移能の高い大腸がん、肺がん、リンパ腫、骨肉腫などの転移にする効果的な化学療法と診断の両方を実施することを目指している。 本年度は、乳腸がん(4T1)細胞を用いた同所移植モデルマウスにするHLの治療効果および腫瘍への選択的蓄積を検討した。in vitroにおいて、4T1細胞の増殖をアポトーシス誘導により抑制した。in vivoにおいてHLの静脈投与により乳がん同所移植マウスモデルにおける相対乳腺(腫瘍)重量の顕著な減少が得られた。HE染色を用いた乳線組織切片における組織学的分析によって腫瘍サイズの減少が確認された。TUNEL染色により、乳がん同所移植マウスモデルにおける4T1細胞のアポトーシスの誘導が観察された。蛍光光プローブ(Indocyanine green; ICG)封入HLの静脈投与後の乳がんモデルマウスの腫瘍への蓄積が観察された。 乳がん(MDA-MB-453)細胞の同所性移植モデルマウスに対するHLの治療効果および腫瘍への蓄積を検討した。HLの静脈投与により、乳がんモデルマウスにおける相対腫瘍重量の顕著な減少が得られた。TUNEL法により、腫瘍縮小効果がアポトーシス誘導によるものであることを明らかにした。HL/ICGの乳がん細胞にする顕著な蓄積が観察されたが、正常乳腺細胞に対しては蓄積しなかった。乳がんモデルマウスの腫瘍へのHL/ICGの著しい蓄積が観察された。(Anticancer Res., 38, 5645(2018))。 以上のように、HLの乳がんの原発の制がん作用による抗転移効果が得られ、当初の計画通りおおむね順調に研究課題は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は令和2年度に計画した研究を継続するとともに新たに以下の研究計画を開始する。 (1)がん細胞膜をターゲットとするHLのメカニズムの解析(市原、松本、大学院生2名): ん細胞膜をターゲットにするHLについて、① 蛍光偏光解消法によるがん細胞と正常細胞の膜流動性と酵素活性測定法によるHLの細胞増殖抑制効果の相関関係を検証する。② HLの融合前後のがん細胞膜の流動性の経時変化を蛍光偏光解消法により解析する。③共焦点レーザー顕微鏡によりHLの融合前後のがん細胞膜の脂質ラフト形成のイメージングを行う。 (2)in vivoでのがん組織へのHL/ICGの蓄積の観察(市原、大学院生2名):大腸がんおよび乳がんの各種がんモデルマウスに対して、HL/ICGを静脈内投与した後に、経時的に腫瘍の蛍光観察を行う。皮下移植および同所移植(原発モデル)した腫瘍をin vivo 蛍光イメージングシステムを用いて(励起波長775nm、蛍光波長845 nm)、非侵襲的にマウスを外部から観察し、腫瘍へのHL/ICGの蓄積を検討する。 (3)in vivoでのアポトーシス誘導の画像解析(市原、松本、大学院生2名、研究協力者1名(病院研究者)):大腸がんおよび乳がんの各種がんモデルマウスを作成し、HL投与後、固形腫瘍の組織切片を作成し、TUNEL法およびカスペース免疫染色を用い、HLによる固形腫瘍のアポトーシス誘導とメカニズムをin vivoで解析する。現有の共焦点レーザー顕微鏡で観察を行う。
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