2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of efficient culture process of paclitaxel with low productivity
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20K05240
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
山本 進二郎 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (40262307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮坂 均 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (60451283)
林 修平 崇城大学, 生物生命学部, 助教 (30389522)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パクリタキセル / 細胞培養 / 二祖系培養 / タキサン類 / ポリテトラフルオロエチレン / ポリプロピレン |
Outline of Annual Research Achievements |
疎水性イオン液体を含む二相系培養によりタキサン類のパクリタキセル生合成が向上する知見を得ているが、この要因としてイオン液体の抽出効果とエリシター的作用を考えている。本年度においては、イオン液体の増量、ならびに細胞活性化物質の添加などによってパクリタキセルの生産性の向上を検討した。また、液体に替わる媒体として疎水性固体を検討し、パクリタキセル吸着に優れる固体を選択した。 まずは、イオン液体1-butyl-1-methylpyrrolidinium bis(trifluoromethanesulfonyl)imideの添加量を増加させる二相系培養を行った。イオン液体量の増加とともに細胞増殖量が増加し、パクリタキセル生産性も向上する結果が得られた。 次に、パクリタキセル生産向上に寄与するエリシターのジャスモン酸メチルをこの二相系培養に利用した結果、さらにパクリタキセルの生産性が向上する知見を得ることができた。 以上の研究内容をまとめ、学術雑誌Solvent Extr. Res. Dev., Jpn.に投稿したところ、受理され、学術雑誌に掲載された。 また、イオン液体に代替する疎水性固体を利用する研究も行ったところ、疎水性の高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)において、パクリタキセルを効率的に吸着する知見が得られた。しかし、PTFEは高価であるため、安価な疎水性固体を検討したところ、汎用的に利用されるポリプロピレン(PP)もPTFEに近いパクリタキセル吸着能があることが観察され、PPが細胞培養に利用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疎水性イオン液体1-butyl-1-methylpyrrolidinium bis(trifluoromethanesulfonyl)imideを含む培地に細胞を播種して行う二相系培養において、タキサン類のパクリタキセルの生産性を向上させるためにイオン液体の添加量を増やす培養を行ったところ、細胞増殖とパクリタキセル生産量を向上させることができた。さらに、パクリタキセル生産を向上させるエリシターのジャスモン酸メチルを加えたところ、さらなるパクリタキセル生産性の向上が認められた。コロナ禍の中、実験を円滑に進めることが困難であったが、これらの内容をまとめた論文を作成し、専門誌に投稿したところ(タイトル:Enhancement of Paclitaxel Production in Plant Cell Culture Including Increased Amount of Water-immiscible 1-Butyl-1-methylpyrrolidinium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、受理・掲載されることが決まったため、研究の進捗状況は概ね順調と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体によってパクリタキセル代謝が促進される反応や律速段階を検討する。イオン液体の添加効果としてはabioticなストレス因子が考えられるので、イオン液体を含む二相系培養で得られる細胞や培養液に関して、酸化ストレスの指標となる活性酸素種(Reactive Oxygen Species;ROS)や過酸化水素、マロンジアルデヒドの量の測定、抗酸化作用となるカタラーゼ・スーパーオキシドジスムターゼ等の活性測定を検討する。 また、イオン液体を含む二相培養系において、培養中のイオン液体には飽和状態のパクリタキセルが溶解していると考えられるため、フィードバック阻害作用をもつパクリタキセルの持続的な抽出効果は期待できない。そこで、使用済みのイオン液体を新鮮なものと交換する培養を行い、パクリタキセルの生産性のさらなる向上を目指すとともにイオン液体の最適な交換頻度を見出す。 また、イオン液体を交換する二相系培養に、細胞活性化物質の添加効果を検討するため、ジャスモン酸メチルを入れて、細胞増殖とパクリタキセル生産量を調べ、最適なジャスモン酸メチルの濃度を決定する。このジャスモン酸メチルを添加する二相系培養では、疎水的なジャスモン酸メチルとイオン液体によって協同的な細胞活性化が誘導され、パクリタキセルのさらなる生産性の向上が期待できる。また、ジャスモン酸メチルとイオン液体を含む二相培養系に水溶性の5-アミノレブリン酸などを加え、一層の細胞の活性化を試み、パクリタキセルの飛躍的生産に有効な物質の濃度や組み合わせを検討する。 イオン液体からパクリタキセルを効果的に逆抽出することも重要である。揮発性の高い様々な有機溶媒などを検討する。 イオン液体に変わる疎水性固体を利用する培養も試みる。PTFEやPPなどの固体を利用する固液二相系培養を行い、パクリタキセル生産性を向上できる固体を検討する。
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Causes of Carryover |
生じた残額333円は少額で試薬の購入ができなかったため、次年度の試薬の購入に充当する予定である。
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