2020 Fiscal Year Research-status Report
光の力学作用を利用したペロブスカイト結晶のバンドギャップ制御
Project/Area Number |
20K05242
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
柚山 健一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (20786355)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ペロブスカイト / 光圧 / ハロゲン交換反応 / 顕微分光 / ヘテロバンド構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハロゲン化金属ペロブスカイトのバンドギャップを空間的に変調するために、ハロゲン交換反応を位置選択的に誘起する手法が研究されている。これまで、リソグラフィーで作製した高分子マスクを用い、反応を任意の領域で物理的に阻害するアプローチが報告されている。本研究では、光圧によりハロゲン化物イオンの局所濃度上昇を誘起し、交換反応を空間的に制御する。2020年度においては、メチルアンモニウム臭化鉛ペロブスカイト(CH3NH3PbBr3)のマイクロ結晶を対象とし、ヨウ化物イオン・臭化物イオンの局所濃度上昇およびイオン交換反応の空間制御に関する実験を実施した。 ヨウ化物イオンを含む前駆体溶液中でCH3NH3PbBr3結晶の表面に集光レーザーを照射すると、集光点近傍においてのみハロゲン交換反応が誘起された。レーザー照射位置でのみCH3NH3Pb(Br・I)3が形成し、発光が緑から赤色に変化した。一方、臭化物イオンを含む溶液中で同様の実験を行うと、集光点近傍においてのみ結晶中のハロゲン欠陥濃度が下がることを見出した。それに伴い、発光強度が増大し発光寿命が長くなった。さらに、ヨウ化物イオンを含む前駆体溶液にこの結晶をさらすと、レーザー未照射の部分でのみハロゲン交換反応が起こり、CH3NH3Pb(Br・I)3が形成することが明らかになった。このように、バンドギャップが非連続的に変わるヘテロバンド構造の作製に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光圧を利用してハロゲン化物イオンの局所濃度上昇を誘起すると、ペロブスカイト結晶表面でハロゲン交換反応を促進することができる。さらに、結晶と同じハロゲン化物イオン含む溶液中ではハロゲン欠陥濃度が下がり、空間選択的に交換反応を抑制することができることを見出した。二つのアプローチにおいてヘテロバンド構造を作製することに成功した。バンドギャップが連続的に変化する傾斜バンド構造作製のための光学系の改良や、発光特性を明らかにするための顕微発光分光装置の構築も完了し、おおむね順調に進んでいる。メチルアンモニウム臭化鉛ペロブスカイト以外の結晶に拡張するために、マイクロ結晶作製方法を検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
メチルアンモニウム臭化鉛ペロブスカイト(CH3NH3PbBr3)のマイクロ結晶を対象とし、ヨウ化物イオン・臭化物イオンの局所濃度上昇およびイオン交換反応の実験を行う。2020年度とは異なり、顕微鏡のステージ操作によって、集光点を移動させながら、イオン交換反応を誘起する。任意の空間パターンでハロゲン組成またはハロゲン欠陥濃度が制御されると期待される。これにより、傾斜バンド構造を有するペロブスカイトマイクロ結晶を作製する。さらに、顕微発光分光装置により、その発光特性を明らかにする。セシウムハロゲン化鉛ペロブスカイトやホルムアミジニウムハロゲン化鉛ペロブスカイトのマイクロ結晶を作製し、同様のアプローチでヘテロ・傾斜バンド構造の結晶を作製する。
|