2020 Fiscal Year Research-status Report
Electromechanical Properties of Single-Molecule Junctions
Project/Area Number |
20K05245
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 慎太郎 東京工業大学, 理学院, 特任准教授 (70422558)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 電気伝導度 / 熱起電力 / ブレイクジャンクション |
Outline of Annual Research Achievements |
単分子接合は、単分子素子としての応用や有機ELなどの有機電子デバイスにおける金属―分子界面のモデル系、そして金属と単分子が複合した新物質として注目を集めている。これまで多様な単分子接合が研究され、スイッチ、ダイオードなどの単分子接合に特有な物性の可変性に基づいた機能発現が報告されてきた。単分子接合では界面構造や分子配座が可逆的に変化し、電子状態、電気輸送特性、熱電特性などの物性が可変的な力学応答性を示す。本年度は、機械的に分子配向や分子-金属間の界面構造を変化させることで、単分子接合の熱電能の機械的変調性について調べた。単分子接合のゼーベック係数はフェルミ準位における単分子接合の電子透過率のエネルギー微分に比例するため、単分子接合の透過率と同様に、熱電能も分子の配向や分子-金属間の界面構造によって大きく変化することが期待される。まず、ブレイクジャンクション法により金電極間に単分子接合を作製した。そして、作製された単分子接合に温度勾配を与え、機械的な外力を加えながら熱起電力を計測し、単分子接合のゼーベック係数を求めた。これまでの研究から単分子接合の電子状態が良く知られている、フラーレン(C60)と4,4’-ビピリジン(BPY)をターゲット分子として用いた。機械的外力により電極間距離を短くするにつれ、分子-金属界面の構造変化を反映して、ゼーベック係数の絶対値はBPYでは減少し、C60では増加した。機械的に誘起される分子接合の界面構造と分子軌道エネルギーの変化に応じた、ゼーベック係数の変化率は両極性を示し、分子接合の熱電能が変調されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のフラーレン(C60)と4,4’-ビピリジン(BPY)の単分子接合の熱起電力計測に加え、各単分子接合について電流電圧特性を計測し、その解析を行うことで単分子接合の電子状態の決定を行った。その結果、機械的外力による分子-金属間の界面構造の変化にともない、分子軌道(LUMO)のエネルギーが増減するため、熱電能が変調されることを実験的に確認した。このように当初の予定通り、熱起電力に加え、電流電圧特性を計測し、単分子接合の電子状態と界面構造を決定することで、観察された単分子接合の熱電能の機械的変調の仕組みを明らかにした。今後は、C60やBPYなどの標準的な分子に加え、ナノグラフェン分子やヘリセン分子の単分子接合の電気伝導度、熱起電力、熱電導度の力学応答性の解明に着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
単分子接合の電流電圧特性、熱起電力、熱伝導性の計測法を統合し、同時計測法と相関解析法の開発へ向けて研究を推進する。そして、分子変形や界面構造変化と単分子接合の物性の相関を決定するとともに、物性の制御性を検証する。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも研究が順調に進んだ結果、実験に使用するフォースセンサーなどの消耗品購入や理論計算のための計算リソース確保に必要な経費が減少したため、次年度使用額が生じた。研究が順調に進んだ結果、次年度は当初予定に加え、熱計測を計画している。本年度の未使用額は、熱計測に必要な温度センサーの購入に充てる。
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