2021 Fiscal Year Research-status Report
光駆動型ロールアップナノシートによるタンパク質フォールディング制御
Project/Area Number |
20K05250
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
亀田 直弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20517297)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 糖脂質 / ジアセチレン / 重合 / ナノシート / ナノチューブ / タンパク質 / 酵素 / リフォールディング |
Outline of Annual Research Achievements |
<光刺激駆動型ロールアップナノシートの構築>光重合性部位としてジアセチレン長鎖アルキルジカルボン酸、その片末端にグルコースアミン、もう一方の末端にグリシンをアミド結合させた糖脂質を設計・合成した。糖脂質を水中で加熱還流後、室温まで徐冷した。糖脂質の水分散液の乾燥サンプルに対しては電子顕微鏡観察、セミウェットサンプルに対しては原子間力顕微鏡観察を行ったところ、ロールアップナノシートを中間体とする細孔径約60 nm、長さ数マイクロメートルのナノチューブが観察された。粉末エックス線回折測定、赤外分光測定、紫外可視分光測定、円偏光二色分光測定等により、ナノチューブは、糖脂質が平行に配列した多層単分子膜からなり、外表面がグルコース残基、内表面(細孔表面)がグリシン残基で被覆された非対称構造であることを明らかにした。紫外光照射によりジアセチレン部位を重合するとロールアップナノシートからなるナノチューブの曲率が増大し、細孔径が60 nmから10 nm以下へと収縮した。 <タンパク質リフォールディング促進機能の評価>6 mol/l塩酸グアニジンによる化学変性で、蛍光を失活させた緑色蛍光タンパク質、触媒活性を失活させた炭酸脱水酵素、クエン酸合成酵素それぞれの水溶液と凍結乾燥処理を施した上記ナノチューブを混合、一晩攪拌した。この操作により、ナノチューブの細孔内に変性タンパク質・酵素を包接することができた。その後、ナノチューブに紫外線を照射し、光重合を介して細孔径を収縮させたところ、当該タンパク質・酵素がバルク水中に放出されると同時に緑色蛍光タンパク質の蛍光、炭酸脱水酵素及びクエン酸合成酵素の触媒活性が回復することが分かった。ナノチューブ細孔の収縮現象が、タンパク質・酵素のリフォールディングを著しく促進することを突き止めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のタンパク質や酵素のリフォールディングを促進可能な光駆動型ロールアップナノシートに加え、ロールアップシートを経由して生成する光収縮性ナノチューブの開発に成功したため。ロールアップナノシートやナノチューブのライブラリ構築に向けた分子設計や組織化手法のさらなる指針が得られたため。また、タンパク質・酵素に対する包接や放出の最適条件、リフォールディング効率に関わる因子もいくつか明らかになったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に引き続き、<光刺激駆動型ロールアップナノシートの構築>を実施する。ナノシートのロールアップ化時の曲率、延いてはロールアップナノシートに生じる細孔のサイズ制御を目的とし、脂質末端に、単糖のグルコースよりも立体的に嵩高い二糖、三糖の他アミノ酸を導入する。光応答性部位として、アゾベンゼンやジアセチレンの他、光環化性スチルベンや光開環化性スピロベンゾピランを導入し、ロールアップ化・平面化の速度が異なるナノシートの調製も試みる。ナノシート表面に、タンパク質と相互作用(静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合形成)が可能なイオン性官能基、水酸基、脂肪族基、芳香族基の他、タンパク質に対して凝集抑制効果を示すポリエチレングリコール基も導入する。ナノシートを構成する脂質単分子膜が、温度に応じて、結晶固体状態から液晶性流動状態に相転移する現象を利用し、包接時におけるロールアップナノシートと変性タンパク質との間の物理的相互作用(接触による力学的相互作用)の制御を図る。脂質分子に長さの異なる飽和炭化水素鎖や不飽和炭化水素鎖を導入するなどして相転移温度を制御する。 <タンパク質リフォールディング促進機能の評価>については、上述したロールアップナノシートのライブラリを用い、化学・熱変性させた分子量・サイズ・等電点・ジスルフィド結合の有無などが異なる種々のモデルタンパク質のリフォールディングを網羅的に行う。タンパク質の包接率、リフォールディング率に及ぼすナノシートの表面化学構造、ナノチャンネルの径サイズ、単分子膜の結晶性・液晶性(硬さ・柔らかさといった機械的性質)の影響を詳細に解析する。また、正常タンパク質の放出速度・分離回収率に及ぼすロールアップナノシートの平面化速度の影響も検討する。
|
Causes of Carryover |
当初、学会への参加・成果発表のため旅費(国内)を計上していたが、コロナ渦で当該学会がオンライン開催となったため。未使用額については、国際誌論文による成果発表に向け、原稿の英文校閲費(分類:その他)に利用する予定である。
|