2021 Fiscal Year Research-status Report
Physical properties of covalent organic frame materials
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20K05253
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡田 晋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70302388)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 炭素同素体 / 共有結合性有機骨格 / 炭化水素分子 / ナノ炭素物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子論に立脚した計算物質科学の手法を用いて、種々の炭化水素ならびに炭素凝集構造の物質設計と物性解明をおこなった。とくに、2個の5員環が頂点原子を共有したスピロ化合物、スピロ[4.4]ノナテトラエンを構成単位とした2次元炭素同素体の物質設計をおこなった。その結果、今回設計した2次元物質は、スピロ[4.4]ノナテトラエンの配置、また、共重合させる炭化水素分子の形状に依存した電子構造を有することが明らかになった。スピロ[4.4]ノナテトラエンの配置により、π電子系が内部構造を有する副格子系となり、フェルミレベル近傍かつブリユアンゾーン端において、ディラックノーダルラインを有する、得意な電子系を有することを示した。また、スピロ[4.4]ノナテトラエンを蜂の巣格子状に整列させた構造においては、磁性状態が基底状態となり、そのキュリー温度が420Kとなることを示した。 ナノカーボン物質の凝集構造として、ファンデルワールス力により凝集したカーボンナノチューブ(CNT)の電子構造の解明をおこなった。その結果、これまであまり注目されてこなかったCNT鉛直方向の電子構造が、凝集構造を作るCNTの対称性と凝集構図中での配向に強く依存することを明らかにした。すなわち、両者が3回対称を保持する場合、CNT間のバンドの分散関係が2つの飛び移りを有する蜂の巣格子特有の構造を有する。また、このような分散関係は対称性に対して脆弱であることが明らかになった。さらに、2層グラフェンと炭化水素分子からなる全炭素のグラファイト層間化合物の物質設計を行い、当該系において、グラフェン間において電荷移動が誘起されることを予言した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、既存のナノ炭素凝集系、すなわちナノ炭素高次構造の物性の解明をおこなったのみならず、3種類の新しい共有結合性炭素骨格構造の物質設計をおこない、それらそれぞれが既存の炭素同素体と異なる得意な電子物性を有することを明らかにしており、当初計画の物質設計ならびに高次構造の物性解明という目標を達せできている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的に合成されているCOFの多くは、共有結合ネットワークに包含された大きな空隙により、相互貫入構造を有していることが知られている。相互貫入構造は、 分子性固体系や原子層物質系において見られるファンデルワールス複合系と定性的に等価な システムとみなすことが可能である。他方、COFの相互貫入構造は、既存のファンデルワールス複合系では実現が難しい、3次元のファンデルワールス複合系や次元性の異なる共有結合ネットワークからなるファンデルワールス複合系(3D+1D、3D+2D)の実現が可能である。 そこで、相互貫入構造のステージ性や次元性に着目し、相互貫入系の安定構造と電子状態の解明を行う。また、貫入構造による各種物性変調の解明と貫入構造制御による物性デザイン方策の提示を行う。 COFはナノスケールの内包空隙を有することから、原子/分子吸着/内包材料として注目を集めている。また、分子吸着により誘起される内包分子とCOF間の相互作用による構造変調の可能性も示唆されている。そこで、環境ガス分子に着目し、COFのガス吸着能とそれに よる構造と電子状態変調の可能性を明らかにする。さらに、COFへの電子/ホールドープによる新奇物性現象発現の可能性を探索するために、原子ドープ系についても構造と電子物性の探索を行う。
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Research Products
(13 results)