2021 Fiscal Year Research-status Report
Plasmonic photo-thermoelectric conversion
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20K05261
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
久保 若奈 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10455339)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラズモン / メタマテリアル / 熱電変換 / 局所熱 / 環境発電 / 光検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,申請者が発見した新しい光熱電変換機構,「熱を介して,光エネルギーを電気に変換する全く新しい光電変換現象」の駆動機構の解明と,その機構に基づく高効率光電変換デバイスの実現を目的としている.R2年度までに,このプラズモニック光熱電変換機構の基本的な駆動原理について,実験的・電磁界計算的に明らかにすることができたため,本年度は,本光熱電変換機構を実用展開することを目指し,本機構に基づく環境発電への展開を図った. 赤外線を含む電磁波を吸収する赤外吸収メタマテリアル構造を,電磁界計算技術を用いて設計し,微細加工技術を駆使して作製した.これまでの研究では,プラズモニック光熱電変換素子が光検出器として機能するか,について検討を実施していたが,その実証ができたことから,今年度は作製した構造を熱電素子の一端に導入して光検出器と同じ駆動機構によって環境発電が実現できないか,初歩的な実験を試みた.具体的には,メタマテリアル構造を銅板電極上に形成し,そのメタマテリアル電極をビスマステルル熱電変換素子の一端に装着して均一な温度環境に設置し,発電について観察を行った.熱電変換素子は,素子の両端に温度差が形成された場合に温度差が起電力に変換される現象である.この駆動原理から,温度差が維持されない均一な温度環境では熱電変換は起こらない.それに対し,申請者は,メタマテリアルを利用すれば,従来の熱電変換が生じない均一な温度環境においても環境発電が生じるのではと推測した.この推測を実証するために,メタマテリアル構造を形成した電極を装着した熱電素子の発電を調査したところ,均一な温度環境においても熱電発電することを見いだした. 本成果は国際会議 SPIE,META2021, KJF-ICOMEP 2021等の招待講演で発表し,またOptics Express誌にて発表をした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的としていた,プラズモニック光熱電変換機構の解明が,予想以上の研究進捗によって達成できた.実験結果およびそれを追随する電磁界計算の計算手法の最適化によって,当初想定していたプラズモニック光熱電変換機構が,計算的にも証明されたことが判明した.今年度は,本研究テーマのさらなる実用展開を目指し,本機構に基づく環境発電への展開を図った.具体的には,熱電素子にメタマテリアルを導入した環境発電への展開である.熱電変換素子は,素子の両端に温度差が形成された場合に温度差が起電力に変換される現象である.この駆動原理から,温度差が維持されない均一な温度環境では熱電変換は起こらない.それに対し申請者は,メタマテリアルを熱電変換素子に導入すれば,従来の素子では発電できなかった均一な温度環境下においても,熱電発電ができるのではないかと推測した.これが実現すれば,従来の熱電素子の駆動制限を超える,新規性の高い熱電発電素子を実現できると申請者は考えた. この均一環境下における熱電発電が実現可能であるか調査をするために申請者は,まず電磁界計算に取り組んだ.500 Kの均一環境下にメタマテリアルを設置した際の吸収特性および発熱特性を調査した.メタマテリアルは電磁波を吸収すると吸収損失によって発熱することが知られている.この現象は古典電磁気学で説明できるため電磁界計算によって発熱量を算出することができる.結果,熱電変換素子の一端にメタマテリアルを装着したところ,500 Kの均一温度環境下において0.83W/m2の発電が可能なことを見いだした.この計算的に求めた成果はOptics Express誌に発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
プラズモニック光熱電変換の機構解明を目的とした本研究であったが,予想以上の進捗により当初の目標を達成し,さらに研究の途中で,あらたな展開を見いだすことができた.プラズモニック光熱電変換機構に基づく環境発電は,従来の熱電変換素子が発電できない均一な温度環境であっても環境発電を可能にする,新規性の高いデバイスになると申請者は考える.従って,R4年度は,計算的に予測したこのメタマテリアルによる均一温度環境下での熱電発電が実験的に実現できるか,について研究を推進する. 加えて,プラズモニック光熱電変換デバイスの高効率化の実現にも取り組む.プラズモニック光熱電変換の機構解明は達成したが,その光検出器の応答性はまだ低く,さらなる高効率化および薄膜化が必要となる.申請者はプラズモニック光熱電変換デバイスを発展させ,素子全面にナノホールアレイ構造を導入し,素子材料の熱伝導率を低下させることにより熱電性能を向上し,高感度光検出を実現する研究を進める予定である.ナノホールアレイ薄膜が光検出器として機能することはすでに明らかにしたが,ナノホールのピッチ・径・配列を制御することにより,電子の輸送を妨げずにフォノンの輸送のみを妨げることが可能になる.これが実現すれば,高い熱電特性によって光応答性の高い薄膜の光検出器が実現すると推測される.フォノン輸送を阻害するナノホールの計算的設計・サンプルの作製・応答性の測定によってより高い応答性のプラズモニック光検出器の実現を目指す.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症対策として,感染した学生や濃厚接触者等に指定された学生が一時期入構できず,研究の進捗が滞ったため当初の計画通りの予算執行にならなかった. 一方,2022年度は新型コロナ措置が緩和され,対面での国内・国際会議が増加した.そのため繰り越した予算を利用して本テーマに携わる学生を対面会議に派遣し,研究発表を実施して成果の周知を図るとともに,新たに発見した光検出器の創製に必要なデバイス・材料を調達する.また研究費は研究遂行に不可欠な電子線描画装置等の利用機器の使用料に充当する.
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Research Products
(7 results)