2021 Fiscal Year Research-status Report
Development Synthesis Route of Oxide Nanosheets with Single-unit-cell Thickness by Utilizing Langmuir Film Interface as Reaction Field
Project/Area Number |
20K05262
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
久保田 雄太 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80851279)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ボトムアップ溶液プロセス / 単位格子厚 / 酸化物ナノシート / 酸化スズ / 酸化銅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続きナノシート形成メカニズム理解のためにSnO2ナノシート合成を中心に行った。また、他の酸化物ナノシート合成への展開として、銅系酸化物のナノシート合成に取り組んだ。 昨年度合成されたSnO2ナノシートは厚さ0.9 nm、横に920 nm程度と1000を超える高アスペクト比ではあったが、その厚みは単位格子厚よりも大きかった。そこで、気液界面に形成させるラングミュア膜の形成条件や合成のpH、温度、時間の検討を行った。具体的には、ラングミュア膜を形成するオレイルアミンを展開する溶媒としてヘキサンやクロロホルムを検討するとともに、ラングミュア膜の密度を変化させた。また、HCl添加により滴下直後に界面に核が形成されるのを防いだ。合成pH、温度については、緩やかに合成を行うことで薄く、広がりの大きなシートができると予想して、塩基性条件の他、酸性条件での合成、60℃の他、45、50℃での合成を試みた。合成時間については、60-300分で条件を振ることでシートの厚みと広がりに与える影響を調査した。上記検討の結果、ラングミュア膜の密度がナノシートの厚みに大きな影響を与えることが示唆され、密度を従来よりも下げた条件で厚み0.38 nm、横に610 nm程度のアスペクト比約1600のナノシートが形成された。このナノシートがSnO2のc軸を厚み方向としていた場合、その単位格子厚は約0.32 nmになる。AFMにより測定された0.38 nmという値はその値に近い。今後TEM観察等による詳細な分析は必要であるが、単位格子厚SnO2ナノシートが形成されたものと思われる。 また、Cu2Oナノシート合成に向けた前段階として還元剤を加えずにCuOナノシートの合成を行った。現段階では数nmの厚みを有するため、SnO2同様にラングミュア膜の密度を中心とした条件検討の必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度のSnO2ナノシートの合成において、ラングミュア膜の密度をはじめ、合成のpHや温度、時間の条件振りを行うことで、本プロセスにおいて各合成パラメータがシート厚に与える影響が徐々に明らかとなってきた。また、SnO2以外にもCeO2、CuOでもナノシートが形成されており、水溶液系で合成可能な酸化物であれば本プロセスを広く適用可能であることが示唆された。本結果は、ラングミュア膜界面を反応場とすることで単位格子厚酸化物ナノシートの合成が可能なプロセス開拓を目的とする本研究において、望ましい成果である。今後はさらにパラメータの種類や振り幅を増やすことで、単位格子厚でありながらより大きな広がりをもつナノシートの合成が期待される。また、昨年度導入した表面張力計により、界面活性剤滴下に伴う原料溶液表面の表面張力測定が可能となっており、界面活性剤種を変更した際にもラングミュア膜が形成される滴下量条件範囲を得ることができる。このことから、シート面として析出する結晶面を変化させることが可能ではないか、という展開も見え始めている。 合成されたナノシートの特性評価については、本年度のSnO2ナノシートには行えていないものの、SnO2ナノシートが有すると期待される湿度センサ能を評価するシステムの整備は進んでおり、来年度には稼働可能である。来年度研究を進める銅系酸化物においても湿度センサ能を有することが期待できるため、特性評価は順調に行えるものと期待される。 以上のような研究成果と来年度への準備状況から、現在までの進捗はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、本年度の研究によりシート厚に大きな影響を与えることが明らかとなったラングミュア膜の密度を中心にさらに合成条件を検討することで、これまでに合成されたCeO2や来年度合成を進める銅系酸化物の単位格子厚ナノシートを得る。また、今年度組み立てた湿度センサ能評価システムにより、SnO2や銅系酸化物ナノシートの湿度センサ能を評価する。 銅系酸化物ナノシート合成においては、Cu2Oナノシートの合成を目的としているものの、還元剤の添加等により合成条件が複雑化するため、本年度はCuOナノシートの合成を中心に行った。その際得られた知見に基づき、今後はCu2Oナノシートの合成にシフトする。また、CuO、Cu2Oナノシート合成に加えて、これまでのCeO2、SnO2ナノシート合成で得られた知見をまとめて、本研究を提案するに至った単位格子厚Coフェライトシートを再現性・均一性よく合成する。 ナノシート合成においては一般的にその再現性や試料の均一性が課題となる。本研究においては、核生成点をラングミュア膜界面に絞ることで、形成される試料の再現性や均一性の向上を目指している。これまで原料溶液のpH制御方法を、NaOHの原料溶液への添加、加水分解によりアンモニアを放出するヘキサメチレンテトラミンの原料溶液への添加、原料溶液外部からのアンモニアガス添加をそれぞれ検討して来たが、核生成点をラングミュア膜界面により絞ることができると考えられる原料溶液外部からのアンモニアガス添加の手法・条件を確立する。これにより、新規溶液プロセスGas-assisted Langmuir film Reaction Field (G-LRF) Synthesisを築く。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、参加予定であった学会が新型コロナウイルスへの対応により、オンライン開催もしくは中止となり旅費・参加費がかからなかったことで次年度使用額が生じた。生じた額は、本年度合成したSnO2ナノシートのTEM観察により表面結晶面調査や、今年度組み立てた湿度センサ能評価システムの改良に使用する予定である。また、成果の公表に向けた学会発表の参加費・旅費、論文投稿費に使用する予定である。
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