2022 Fiscal Year Research-status Report
Development Synthesis Route of Oxide Nanosheets with Single-unit-cell Thickness by Utilizing Langmuir Film Interface as Reaction Field
Project/Area Number |
20K05262
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
久保田 雄太 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80851279)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ボトムアップ溶液プロセス / 亜酸化銅ナノシート / 酸化セリウムナノシート / シート形成メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度にSnO2ナノシート形成メカニズムの理解のために行った気液界面に形成させるラングミュア膜の形成条件や合成のpH、温度、時間の検討から得られた知見に基づいて、Cu2Oナノシートの合成とCeO2ナノシートの合成を中心に行った。種々条件の調整によりCu2Oでは、厚さ1.7-3.2 nm程度、横に数から数十um程度の形状を有するCu2Oナノシートが形成された。ただし、得られたシートはシートが横に繋がったような形状をしており、所々に孔の空いた特徴的な形状であった。孔のサイズは横に数十um程度の形状を有する試料で数百nmから数um程度であった。詳細に合成時間を振って各試料を観察したところ、孔のサイズは合成時間が長くなるにつれて増大する傾向にあった。Cu2Oナノシートの形成においては、気液界面で形成されたナノ粒子が気液界面に沿って凝集、成長することにより円形に近い形状のナノシートが形成され、その後シート同士の接合による孔の形成、シートサイズの増大が起こり、溶液中での溶解再析出、ラングミュア膜崩壊に伴う気液界面の原料イオン濃縮領域の崩壊による溶解再析出の促進により、円形に近い形状の孔が形成されたものと考えている。従って、今回のCu2Oナノシートのようなナノ粒子の凝集からナノシートが形成される場合には、合成時間、およびラングミュア膜の安定性が試料形状に大きな影響を及ぼすと考えられる。CeO2では、厚さ約3.9 nm、横に数百umのナノシートが形成された。合成条件の検討により、これまで本研究で合成したCeO2ナノシートと比較してシートサイズが数百倍になったものの、厚みが3倍となった。従来は厚さ1.3 nm程度で単位格子2-3個分の厚みであったが、今回は単位格子7-8個分の厚みであった。なお、CeO2においてもCu2O同様に円形に近い形状の孔が形成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに本研究で得られた知見に基づいて、Cu2OやCeO2において、数から数百umサイズのナノシートが得られた。CeO2については、シートサイズの増大に伴い厚みが従来の約3倍となったが、これまでの知見に基づいて厚みを減少させることは可能であると考えている。また、本年度のCu2OやCeO2においてナノシートに円形に近い形状の孔が観察されたが、詳細に合成時間を振って各試料を観察することで、孔の形成過程を考察することもできた。これまでにCeO2、SnO2、銅系酸化物ナノシートの合成に成功しており、またそれらのシート形成メカニズムの検討も行えており、ナノシート合成プロセスの開拓は順調に進んでいる。ただし、シートサイズの増大とシート厚みの減少を同時に実現することができておらず、任意の酸化物において単位格子厚ナノシートを形成させる指針はまだ示せていない。これが今後の課題である。 以上の状況を総合的に判断して、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、本年度まででシートサイズの増大指針はある程度見出すことができたため、今後はこれまでに検討したナノシート形成メカニズムに則ってシート厚みの減少を目指す。具体的にはCeO2ナノシートについて単位格子厚化を目指す。それら実験の中で厚みと合成パラメータの関係性を整理することにより、他の酸化物への展開が可能なプロセスの指針も示す。CeO2ナノシートについてはこれまでに酸素ガスセンサ特性を評価した。その結果と今後厚みを減少させて単位格子厚としたCeO2ナノシートの特性を比較することで、シートサイズとシート厚みが特性に及ぼす影響を検討する。また、2021年度に組み立てた湿度センサ特性評価システムにより湿度センサ特性の評価も目指す。上記のように行う今後の研究やこれまでの研究結果を他のナノシートやラングミュア膜に関する論文、溶液中におけるイオンの振る舞いや酸化物の成長機構に関する論文を参考にしつつまとめ、学会発表や論文投稿を行い、新規溶液プロセスGas-assisted Langmuir film Reaction Field (G-LRF) Synthesisを築く。
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Causes of Carryover |
これまで本研究で得られた知見に基づいて新たに行ったナノシート合成では、シートサイズが従来よりも増大したが、シートに円形に近い形状の孔が形成されていた。この孔の形成はこれまでに予想していたものでなく、シート形成メカニズム考察のために孔の形成過程を詳細に調べた。その間、シートサイズの増大とシート厚みの減少を同時に達成するプロセス条件を見出す研究が滞り、単位格子厚化を行うための実験、その分析、またこれまでの成果をまとめて学会発表や論文投稿を行うために次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は上記の通り、ナノシートの単位格子厚化を目指す実験、その分析、それら成果の学会発表や論文投稿に使用する。
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