2021 Fiscal Year Research-status Report
分子間架橋酵素電極による生体内微量D-アミノ酸の高感度・高選択的定量技術
Project/Area Number |
20K05292
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
山口 浩 東海大学, 九州教養教育センター, 教授 (00466236)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | D-アミノ酸 / 固定化酵素 / D-アミノ酸酸化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は電極表面に高濃度に固定化したD-アミノ酸酸化酵素を用いて高感度・高選択的かつ安価なD-アミノ酸の定量分析技術を確立することを目的としている。 初年度は酸化酵素の固相表面への共固定化条件の確立を行った。酵素にはD-アミノ酸酸化酵素とヘモグロビンを利用した。固相にはアミノ基修飾PEGAビーズを利用した。酵素はポリリジンが形成する重合体へ取り込まれることでビーズ表面へ積層され、高濃度の酵素を活性を保持したまま固定化できた。2年目は作製した固定化酵素を用いたD-アミノ酸の定量分析技術の確立を検討した。ここでは測定条件(温度・pH)の検討を行い、高感度・高選択性を目指した。従来の生体内微量D-アミノ酸のクロマトグラフィーを用いた定量分析は、多段回操作により精製・化学修飾した試料に用いている。対して、本研究の固定化酵素による分析は酵素の基質特異性を利用した定量法の為、高選択性で検体中の夾雑物の影響が少なく、試料の前処理の必要もなく迅速に多検体の分析が可能である。 分析手法の検討は少量のビーズを用いてサンプルチューブ内でD-アミノ酸の標準品を用いて簡便かつ迅速に行った。反応温度30度において、40回以上の繰り返し利用が可能であった。この事は酵素分子の立体構造は損なわれずに、高濃度でかつ自由度が低い酵素重合体が形成されることで、長時間その触媒活性が持続し安定性が増加したと考えられた。しかしながら反応温度を上昇するとその安定性の低下が観測された。現在、架橋反応条件(架橋剤、各試薬濃度など)を再検討し、最適化を行っている。 ここまでの固定化酵素による分析は酵素反応により生成する過酸化水素を定量することで行った。加えて、電気化学的手法により、D-アミノ酸を定量する目的で酵素電極の開発を検討している。ここでは初年度の結果を考慮して金電極表面への高濃度固定化条件の検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目の研究計画は、作製した固定化酵素を用いたD-アミノ酸の定量分析法の確立であった。定量方法には酵素反応により生成する過酸化水素をペルオキシダーゼを用いた酵素反応により定量する方法と酵素電極を作製し、電気化学的に定量する方法の二通りを検討した。 一つ目の分析法は検出感度の向上(酵素反応を促進)する目的で高温での反応を試みたが、固定化酵素安定性に課題があり、現在も固定化条件を検討中である。 二つ目の分析法は酵素反応に必要な補酵素の還元反応の電流値または過酸化水素の電解電流から定量するが、現在、一つ目の課題解決を行いながら酵素電極を作製中であり、2年目の研究計画が完了していない。その為、研究はやや遅れていると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、2年目から引き続き作製した固定化酵素を用いたD-アミノ酸の定量分析法の確立を行う。 製作した酵素電極を作用電極とし、バイオセンサーとする。試料溶液は電極表面に直接供する為、ニトロセルロース膜で保護する。性能評価は電流値を定量し、市販のD-アミノ酸に対して検出感度、アミノ酸選択性および使用回数について行う。バイオセンサーの再利用は電極から試料をふき取り、緩衝液で数回洗浄し行う。一般に固定化酵素は酵素溶液と比較して至適pHや至適温度が変化することが知られている。これは固定化により酵素分子の自由度が変化する為と考えられている。本研究における固定化酵素の触媒活性の最適化は定量に用いる電流値に重要と考えられる。その為、反応の温度とpHを検討することで酵素活性の最適化を行う。
|
Causes of Carryover |
消耗品購入において、購入金額が予定よりも安価であったため。
|