2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K05294
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
茂木 克雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (20610950)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 液滴操作 / EWOD / 試薬調製 / 細胞培養 / イオン濃度分極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、エクソソームが骨格筋に疾患因子を伝達する動的な現象を捉え、がん悪液質発症メカニズムを解明しようとしている。 本年度は、がん悪液質の症状を生体外で観察するための骨格筋周辺環境を再現した生体内の可視化システムの開発を進めた。このシステムには、筋細胞のモデルとして使用するC2C12の分化培養の培地環境と、血管内皮細胞のモデルとして使用するTKD2の培地環境を同一のデバイス上で統合して共培養できる機能が必要になる。本研究ではこの機能を実現する方法として、各細胞の培養環境を液滴内に封じ込める方法を考案した。この液滴による細胞培養法を実現するため、液滴を自在に操作できる技術としてEWODという作用を利用したデバイスを新たに開発した。EWODとは、絶縁膜でコーティングされた電極基板に電圧を印加すると、基板の見かけ上の濡れ性が変わる作用で、微小液滴を自動操作することに利用できる。EWODの技術を用いて、液滴状の培地を搬送してそれぞれの細胞を培養することで、培養条件の異なる細胞を隣接させて培養することができる。本年度は、バイオ実験に最適なディスポーザブルなEWOD用の基板を新たに発明することができた。この基板の有用性を示すため、微量検査薬を自動調整する実証実験を行った。結果として、検査薬を液滴の状態で自動調製することに成功し、調製した検査薬をマウスの臓器のシンチグラフィーに適用することができた。 一方で、以上の液滴操作技術と並行して、がん細胞から分泌されるエクソソームの精良なサンプルを精製するための技術について、開発を進めた。具体的には、イオン濃度分極による濃縮精製技術を最適化するための評価検証を実施し、その成果について学術誌と学会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた生体内の可視化システムの開発については、細胞を扱うウェット実験ならではの共培養技術に関する新たな課題が生じたため完了には至らなかった。一方で、新たな課題である「複数種類の細胞の共培養」を可能にするため、細胞ごとに異なる培養環境を液滴の形で扱える培養技術を考案し、その液滴制御用の初期デバイスの開発に成功した。この技術は、培養環境の異なる細胞の共培養ができる技術として有用な技術であり、Organ-on-a-chipの分野における非常に大きな成果といえる。また、エクソソームの濃縮技術を最適化することで、一部の研究を当初の計画よりも促進することに成功している側面があることから、進捗状況についてはおおむね順調に進展していると結論付けた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に開発したEWODデバイスによる液滴を用いた細胞培養技術を確立し、生体内の可視化システムを開発することで、研究を当初の計画通り遂行する。さらに、初年度に最適化したエクソソームの濃縮技術を利用して、エクソソームの精良サンプルの準備を進める。これにより、骨格筋に対する高濃度エクソソーム溶液の暴露実験を行い、筋細胞表面近傍で起こるサブミクロンスケールの現象を可視化していく。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の蔓延、いわゆる新型コロナ禍により、やむを得ず中止になった外部施設での実験や、打ち合わせ、国際会議の講演を次年度以降に再計画しており、それに伴う諸費用として次年度の使用額が生じた。使用計画として、初年度中に実施できなかった実験にかかる消耗品、材料費、施設利用料として使用する。また、次年度に延期となった打ち合わせや学会参加のための主張費用や、 関連研究資料の購入、論文投稿料・英文校閲費、等に使用する。
|
Research Products
(6 results)