2020 Fiscal Year Research-status Report
Enhancement of spin-Seebeck efficiency and challenge to its application
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20K05307
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
田辺 賢士 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00714859)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピンゼーベック効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、IoT技術を支えるセンサー技術開発とそれらを支える独立電源の技術開発が活発に行われている。独立電源には光や振動、あるいは熱といった環境発電に期待が高まっており、本研究ではその中でも熱電発電に注目して研究を行った。本研究でテーマとなるのは、磁性体を用いた熱電発電効果の一つであるスピンゼーベック効果(SSE)である。SSEは強磁性薄膜と重金属薄膜(Ptなど)の2層膜で構成され、膜面面直方向を温度差が発生した際に、膜面面内方向に電圧が発生する現象である。発電量は実用化の観点から見るとまだまだ小さいものの、薄膜であるためのフレキシブルな素材の表面にも作ることができ、またこれまでのシリコンデバイス開発技術などとの相性も非常によく、簡便に作製できるというメリットがある。本研究では、素子の構造と素子の材料といった2つの側面からSSEの高効率化を目指して研究を行った。 まず、素子の構造がフェリ磁性体TbCo層/Cu層/強磁性絶縁体Y3Fe5O12層である多層構造を準備した。この構造に対し、膜面面直方向に温度差を加えることで、フェリ磁性体TbCo層のスピン流-電流変換現象の研究を行う。Tbは大きなスピン軌道相互作用があるため、Co膜に比べると大きな起電力が期待される。またTbCo自身の異常ネルンスト効果による熱電発電効果も期待できるため、重畳して起電力が大きくなることが期待される。実験を行ったところ、Tbの濃度に応じて発電量の増加が観測された。Tbの濃度を調整すると約30%で最大となり、スピンホール角と呼ばれる重要なパラメータがCo薄膜に比べて3倍大きくなることが明らかになった。この成果を学術誌Phys. Rev. Appliedに発表した。さらに類似の構造であるフェリ磁性体TbCo層/Pt層/強磁性絶縁体Y3Fe5O12層を作製し、磁化依存依存スピンホール効果の研究を始めており、この効果はTbCoのネットな磁化ではなく、Coの磁化に強く依存することが明らかになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにTbCoを用いたスピンゼーベック効果の研究が進んでおり、フェリ磁性体TbCoのスピンホール角がTbの濃度に対して大きくなることを明らかにした。この成果は論文出版までこぎつけた。さらにTbCoを利用した磁化依存スピンホール効果の研究にも着手しており、TbCoの磁化ではなく、Coの磁化方向が重要になることも明らかになっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に明らかになった磁化依存のスピンホール効果の研究をさらに進める予定でる。具体的にはTbCoやPt層の膜厚依存性の研究を進める。これまでの研究ではTbCoの組成依存性を調べているものの、膜厚は固定した実験であった。そのため、定性的な議論はできるものの、磁化依存のスピンホール効果の定量評価は行えていない。本年度は膜厚依存性の研究からの定量的評価を目指す。
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Causes of Carryover |
消耗品の使用状況から予算計上していたが、2021年度は新型コロナウイルス蔓延の影響もあり、大学での実験研究が一時期停止していため、これまでの使用実績よりも少なくなったため。
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Research Products
(17 results)