2023 Fiscal Year Annual Research Report
ミュオンを用いたリラクサー強誘電体における局所電荷ダイナミクス計測法の開発
Project/Area Number |
20K05312
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡部 博孝 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (20406838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平石 雅俊 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 研究員 (80712653)
西村 昇一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別助教 (20836431)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミュオン / μSR / リラクサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,これまでに取得した磁気リラクサー強誘電体(1-x)BiFeO3-xBaTiO3(x = 0, 0.33, 0.50, 0.66, 以下BF-BTと略)のμSRデータの再解析を行い,局所的な電荷ダイナミクス(時間的な揺らぎ)を含んだ縦緩和率の温度依存性を抽出することに成功した.BF-BTの反強磁性転移温度(TN)は,xが増加するにつれて線形に減少し,リラクサー組成の終端(x = 0.66)で消失する.またTNで観測される縦緩和率のピークは,xの増加に伴ってピーク強度が減少し,ピーク幅が広がる.これらリラクサー組成(x > 0.33)で観測された相転移近傍での縦緩和率の振舞いは,従来の臨界現象の解析に用いられるようなシンプルな揺らぎの分布に基づく理論で表すことができない.これはおそらく,リラクサーに存在する多数の強誘電性ナノドメイン(極性ナノ領域)の揺らぎ(局所電荷揺らぎ)が,鉄スピンの揺らぎ(磁気揺らぎ)と結合したためであると予想される. 本研究課題を通じて得られた成果を以下に示す. 1.局所電荷ダイナミクス測定技術の一環として,トランジェントμSR法を開発した.本手法は,非定常過程(温度や磁場等の外部環境パラメータが変化している過程)においてμSRデータを連続的に取得・解析する方法であり,in situ(その場測定)な過渡現象(時間発展する)の観察にも適用することができる. 2.磁気リラクサー強誘電体(1-x)BiFeO3-xBaTiO3のμSR測定を通して,極性ナノ領域の電荷揺らぎの影響を反映したとみられる異常な鉄スピンの揺らぎを観察することに成功した.ただし,これら2種類の揺らぎを分離するには,今後,理論的視点からのアプローチが必要である.
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