2022 Fiscal Year Annual Research Report
Energy dissipation process in H2 ortho-para conversion on surface
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20K05337
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
植田 寛和 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (20705248)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水素分子 / 表面 / 核スピン / 回転エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
分子‐表面間のエネルギー移動を明らかにすることは,分子と固体表面の相互作用を理解する上で重要である.水素分子のオルト-パラ(o-p)転換は,核スピンと回転状態の変化を伴う.本研究では,o-p転換を介して,分子の回転エネルギーの散逸過程を解明することを目的とする.エネルギー散逸を理解する糸口として転換確率の表面温度依存性を調べることが重要だと考え,一般的な物理吸着系よりも基板との結合が強いことが知られているパラジウムのステップ表面に化学吸着した水素の転換実験を進めた.この系では,転換確率が物理吸着系よりも高いことが示唆されていたため,速い転換を追跡するために測定時間分解能を従来の測定法よりも向上させた.表面温度範囲40-60 Kで調べた転換確率は過去に報告されている物理吸着系と比べて2-3桁大きく,測定温度範囲において温度とともに転換確率が1桁程度増大することを見出した. o-p転換に伴う回転エネルギー散逸を理解するため,過去に報告されている金属表面での転換モデルを基に転換確率の温度依存性を計算したところ,実験結果の温度依存性と一致しないことが明らかになった.従来の転換モデルでは転換に伴う回転エネルギーは表面の電子系に散逸されると考えられている.実験結果との不一致は,回転エネルギーは表面の電子系だけに散逸されていないことを示唆する.そこで,従来の転換モデルを基に,回転エネルギー散逸先として電子系とフォノン系を取り込んだモデルを構築した.フォノン系も取り入れることで,転換確率の温度依存性の計算結果は,実験結果の温度依存性と同様な傾向を示すことが明らかになった.この比較より,転換に伴う回転エネルギーは表面の電子系とフォノン系の両方が担うことが考えられる.
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Research Products
(3 results)