2021 Fiscal Year Research-status Report
Formation mechanism and application of phononic band gaps due to Fano effects
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20K05341
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水野 誠司 北海道大学, 工学研究院, 講師 (90222322)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フォノニックバンドギャップ / ファノ共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「非ブラッグギャップ」が生じる系である固体・液体超格子に対して、ギャップの形成メカニズムと共鳴透過特性を明らかにすることである。昨年度行った数値計算に基づいて、この系に生じるギャップは、周期性に基づくブラッグギャップと局所共鳴に基づくギャップに分類できることを明らかにした。局所共鳴に基づくギャップでは、周期数が1の場合にも透過率が0となって完全反射がおきる共鳴が生じ、透過スペクトルの形状は非対称なファノ型となる。そこで、今年度は、主に非ブラッグギャップをファノ共鳴に基づいて理解するための基礎研究を行った。ファノ共鳴は、ファノ式と呼ばれる共鳴式で記述され、共鳴周波数、共鳴幅および非対称性を表すファノパラメータqを用いて表される。しかしながら、簡単な結合調和振動子系においてさえ、これらの値は、系を規定する既知のパラメータ(質量、ばね定数など)の関数として求められてはいなかった。今年度の研究において、周期的な外力の印加された結合振動子の力学系における共鳴プロファイルの解析的表式を導出することができ、その結果に基づいて、下記のような知見を得た。 共振器として機能する振動子の振幅は、ローレンツ関数で表される対称的な線形状を示すが、外力が印加された振動子の振幅は、ファノ式で表される非対称の線形状を示す。ただし、qは一般には複素数となる。共振器に摩擦が作用しない場合のみ、外力が加えられた振動子の共鳴振幅は実数のqをもつFano式で記述できる。摩擦が作用し、qが複素数となる場合、共鳴線が同じ共鳴周波数と幅のローレンツ共鳴とファノ共鳴(実数q)の和で表される。その結果、共鳴線の最小値はゼロにならない。言い換えると、ディップの有限な値は、共振器に作用する摩擦の強さを表している。 また、外力が作用する振動子に作用する摩擦がかなり小さいとき、共振振幅はローレンツ共振の形で表される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ファノ共鳴が生じる最も簡単な周期外場中の結合振動子系の共鳴式の解析解を導出できたこと、特に、系を規定するパラメータの関数としてファノパラメータqなどのファノ共鳴を特徴づける量の解析的表式を導出できたことは、固体・液体超格子における局所共鳴に基づくギャップの形成メカニズムの解明に役立つ重要な基礎的知見が得られたことを意味しているため。さらに、これらの解析式は、共鳴プロファイルの制御に役立つことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
周期外場中の結合振動子系と固体液体超格子系との数学的な対応を検討する。また、 固体液体超格子を一様な固体媒質に対応させることによって定義される、有効密度や有効音響インピーダンス等の「有効物質パラメータ」を入射角と周波数の関数として計算する。特に、負の密度、負の音響インピーダンスといった特徴的な値が得られる周波数帯および伝播角度領域を見つける。このようなメタマテリアル的な考え方に基づいて局所共鳴ギャップの形成メカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
出席予定の学会とシンポジウムがオンライン開催になったことにより、参加費や旅費を使用しなかったため。来年度以降の旅費および消耗品の購入に用いる。
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Research Products
(4 results)