2020 Fiscal Year Research-status Report
Three-dimensional distribution control of nitrogen atoms in dilute nitride films using atomic layer epitaxy
Project/Area Number |
20K05346
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鈴木 秀俊 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00387854)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 希薄窒化物半導体 / 原子層エピタキシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、希薄窒化物半導体であるGaAsN膜中において、(i)N原子の空間分布を三次元で制御したGaAsN薄膜の作製、(ii)実際のN分布の評価、(iii)N原子の空間分布がN局在準位(E_N)および電気特性に与える影響の解明、の3点が目的である。 本材料系は、III-V属化合物半導体のV属原子をN原子に置換することで、SiやGeに格子整合可能しつつバンドギャップエネルギー(Eg)を広範囲(1~2 eV)で制御可能な点が特徴である。これにより、基板に格子整合させた多接合太陽電池や光電子集積回路に期待されている。しかし、N原子の導入による電気特性の急激な悪化が問題となっている。この原因の一つとしてN原子の空間分布の不均一が指摘されているが、N分布を直接観察することが困難なため、特性劣化の関連の完全な理解には至っていない。 そこで本研究では、まず意図的に膜中のN原子の空間分布を三次元で制御することを試みている。三次元制御には、1原子層毎に成長が制御可能な原子層エピタキシー(ALE)法による成長方向のN原子分布制御と、微傾斜基板を利用した表面ステップによる面内のN分布制御を併用する。過去の研究によりALE法を用いた成長方向のN分布制御は実現されている。しかし、ALE法で各原料を断続供給した際の表面ステップでのN分布の制御性は明らかになっていない。 そこで本年度は、ALE法を用いて傾斜の方向および角度を系統的に変化させた各種の微傾斜GaAs基板上にGaAsN薄膜を作製し、表面ステップの種類および密度がN分布に与える影響を明らかにすることを目的として実験をおこなった。その結果、Gaステップが表面に多く存在する基板を用いた場合に、膜に取り込まれるN組成が減少する事が見出された。実際のN分布の評価は途中であるが、この結果は面内でGaステップ近傍は選択的にN原子が少なくなっている可能性を示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、ALE法を用いてN原子分布を三次元的に制御した薄膜を作製するための基礎的な成長条件を確認することを目的とした。まず、GaAs上の表面ステップの種類および密度を変化させるため、系統的に傾斜の方向及び角度を変化させた微傾斜GaAs基板上へのGaAsN作製を行い、膜中に取り込まれるN組成の違いを評価した。なお、GaAsの(001)面から、[110]または[1-10]方向に微傾斜させた基板表面上では、それぞれステップ端の原子が異なるGaステップまたはAsステップが現れる。さらに、ステップ密度は傾斜角の増加に伴い増加する。 過去の化学ビームエピタキシー法や有機金属気相成長法を用いたGaAsN薄膜成長の報告では、微傾斜GaAs基板上へのGaAsN成長では、同じ条件でGaAs(001)基板上に成長した場合と比較してN濃度が高くなる。つまり、微傾斜により表面ステップの増加によってN原子の膜中への取り込みは多くなる。しかし、ALE法を用いた成長の場合では、Ga、Asステップのいずれが表面に存在する場合でも膜中へのN原子の取り込みは減少した。特に、Gaステップの方がN取込の減少量は多かった。この結果は、ALE法でのGa,As,Nの各原料を基板表面人交互に供給する方法では、Gaステップ近傍ではAs原子が優先的に取り込まれ、N原子の割合が低下していることを示唆する。微傾斜基板上では、原子Gaステップは微傾斜角度に応じて表面上に周期的に形成されるため、微傾斜基板上にALE法で作製した面内のN分布は周期的に変化している事が期待される。現在は、周期構造確認を目指した構造解析を行なっている。 本年度は、コロナ禍の影響により、大学院生の大学への登校や、他の機関への出張が制限される時期があり、実験を計画通りに行えない状況にあった。そのため、当初の実験計画よりやや遅れてしまっていると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度:前半は、ALE法を用いて微傾斜GaAs(001)基板上に作製したGaAsN薄膜に対してX線逆格子マッピング測定を行い、傾斜のないGaAs(001)基板上に作製した薄膜との比較と、N分布を過程した回折強度シミュレーションとの比較を行う事で、面内のN分布の変化を評価する。また、ホール効果測定を用いてキャリア移動度の評価を行い、面内N分布の違いがキャリアの散乱体に与える影響を明らかにする。後半は、前半に行った、微傾斜基板を用いることによる面内のN分布への影響評価の結果を踏まえて、成長方向のN分布制御を併用し、三次元でN分布を制御したGaAsN薄膜の作製を試みる。 N分布の制御性が悪く、当初予定した大学所有のX線回折装置で構造の評価ができない場合は、高輝度のX線が使用可能な放射光施設を利用しての構造評価をおこなう。
2022年度: 2021年度に作製したN分布を制御したGaAsN薄膜のホール効果測定を行い、キャリア散乱体密度を評価する。この結果を、通常成長したGaAsN薄膜と比較する事で、N分布が電気特性に与える影響を明らかにする。この結果をもとに、さらに異なるN分布を持ったGaAsN薄膜の作製評価を行い、電気特性向上に関する知見を得る。
|
Causes of Carryover |
理由 新型コロナウィルス感染防止のため、テレワーク推進による代表者および大学院生の大学への登校自粛、他機関への出張が制限される時期があった。そのため、予定した実験が終了していない。また、県外への移動自粛の要請や、学会の中止もしくはオンライン開催により、予定していた出張を実施しなかった。これらに予定していた予算を次年度に繰り越したためである。 使用計画 年度前半に昨年度に予定して実験および学会発表および論文発表を集中し、年度中盤から後半にかけて当初に計画した通りの研究を進めることで、研究計画を変更し、予算執行を進める。
|
Research Products
(1 results)