2020 Fiscal Year Research-status Report
超精密酸化物光結晶化技術の開発とフレキシブル酸化物生体センサの創製
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20K05353
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中島 智彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50435749)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザープロセス / 酸化物結晶化 / 光結晶化 / フレキシブルセンサ / ウェアラブルデバイス / ペロブスカイト酸化物 / サーミスタ / 低温製膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的の一つである「光結晶化を用いた生体センシング用フレキシブル酸化物薄膜センサの創製」に関し、酸化物の超精密結晶成長を実現する紫外線レーザー照射時の光結晶化パラメータを探索し、これまで不可能であったフィルム厚10μm以下の極めて高い柔軟性を有する有機基材上へペロブスカイト型酸化物(Sr,NiドープSmMnO3)サーミスタ薄膜センサを製膜することに成功した。 本ペロブスカイト酸化物はバルクでは1300℃以上の高温で結晶化する材料であり、極薄の有機基板上で直接製膜するのは困難であったが、化学溶液法によって形成した前駆体膜のナノ粒子サイズ、密度、膜厚、基材への光照射時の熱拡散を精緻に制御することによって最適解を見出し結晶化させることができた。 サーミスタは未病対策などに代表される生体モニタリング用ウェアラブルデバイス用温度センサや他の主要センサの温度補償として重要な構成部品となる。本研究では目標設定した10μmのわずか半分の厚みとなる5μmという極めて薄いポリイミド上へ、光結晶化条件を極めて精緻に最適化することで膜厚1μmの酸化物サーミスタの製膜に成功した。5cm角の超薄シート基板上に3x3のサーミスタアレイ薄膜を形成した重さ数十mgのサーミスタシートは500μmの屈曲性を実現し人体に容易に吸着するほど軽量かつ形状可変であり、1000回の屈曲試験、1000回の25℃~80℃の冷熱サイクル試験でも劣化しない耐久性を確認した。また、非常に薄い基材は熱容量が小さく、0.1sという極めて高速な温度応答を可能にすることにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で掲げる二つの研究目標はA「酸化物光結晶化の時間スケール理解と酸化物超精密結晶成長制御の実現」、及びB「光結晶化を用いた生体センシング用フレキシブル酸化物薄膜センサの創製」であり、目標Aについては結晶成長の過渡現象を観察するための固体レーザー装置用光学系の導入を進めており2021年度中に有意なデータを得ることができるものと考えている。2020年度は特に目標Bに重点を置き研究を進め、フィルム厚10μm以下の極めて薄い基材上へフレキシブルセラミックセンサを製膜することに成功するなど非常に順調に成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのとこと当初の計画通りの進捗が得られており、今後も引き続き当初計画に従って遂行する。今年度は特に光化学的効果の定量的評価には紫外連続光源やナノ秒パルス光源としてYAGレーザー(4倍波266nm)を用い、複数の単結晶基板に対し、異なる材料のエピタキシャル成長の結晶成長核形成に必要な吸収係数の大きさ、及び励起光の強度の閾値とともに定量的評価を行う。光化学的効果による結晶成長初期過程でどのようなタイムスケールで進行するのか薄膜の物性値の過渡現象を測定して評価を行う。具体的にはパルス光励起によるパルス光加熱によって昇温する前段階から昇温過程(パルス光照射から数ナノ秒から数百ナノ秒の範囲)に結晶成長が開始また、進行していることを示す光励起電子の挙動を過渡吸収分光法によって評価する。また、結晶化によって伝導・光物性値の大きく変化する薄膜を用いて電気・光学物性値の過渡現象評価も行い、相補的に結晶成長の時間変化を追う。また、フレキシブル酸化物センサ創製ではこれらの評価を元に、シート形状以外のフレキシブル素材上へも展開を図る。
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Causes of Carryover |
2020年度に契約したレーザー光学系用装置(レーザーホモジナイザ)について装置メーカーの納品物品が仕様を満たせず追加作業中で近日中に仕様を満たす装置が納品予定。(本装置の予定金額が1,430,000円で次年度使用額となっている金額の大部分を占める。)残金は本装置に付随して装置光学系を構築するための予算であり、上記レーザー光学系が納品されれば当初の予定通りの使用計画で進めることができる。
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Research Products
(4 results)