2020 Fiscal Year Research-status Report
Sea Glassに学ぶガラス固化体の化学的安定性評価シミュレーションの基礎開発
Project/Area Number |
20K05379
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
澤口 直哉 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40357174)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アルカリホウ酸塩ガラス / 4配位ホウ素 / 分子動力学法 / 原子間相互作用 / 三体間相互作用ポテンシャル関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホウ酸塩融体/ガラスの古典的分子動力学へ適用する原子間相互作用の改善に取り組んだ。シミュレーションはホウ酸塩/ガラスの代表的組成系である xNa2O-(1-x)B2O3, (x = 0.1, 0.25, 0.33, 0.4)を対象に行った。この系のガラスの短距離秩序構造(SROS)としてホウ素は酸素3配位, ⅢBあるいは酸素4配位, ⅣBの2種類の構造ユニットを形成することが知られている。また、xの増加に伴いx<0.4までは全ホウ素中のⅣBの割合、RB4が増加することがわかっている。この構造ユニットの組成変化の再現性の向上を指標として以下を実施した。 先行研究と同様の2体間相互作用関数の変数を試行錯誤で再調整し、実施した分子動力学法では、RB4のxに対する変化を測定結果と一致させることはできなかった。分析の結果、シミュレーションでは実在ガラス中に存在しないと考えられている、2員環構造(ホウ素2つと酸素2つが形成する4つのB-O結合からなる環構造)が形成されており、これがRB4の再現性低下の原因の1つと考えられた。その多くはⅣB(四面体ユニット)2つが稜共有した2員環であった。 そこで、2員環の形成を抑制するために、結合角θO-B-OかθB-O-Bのいずれかが 90度とならないよう制御する三体間相互作用関数、U3を加えることが有効であると考えた。ⅢBとⅣBの双方の形成を妨げないためにはθO-B-Oではなく、θB-O-Bの制御が適切であると考え、U3(θB-O-B)を導入した。 U3(θB-O-B)を扱えるようにした。導入したU3(θB-O-B)の調整変数は5つある。これらを調整可能なように、分子動力学法のソフトウェアを改良した。現在、5つの変数の最適化を試行錯誤で進めている。現在、融体状態について、ある程度2員環の形成を抑制することはできている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子動力学計算のソフトウェアの改良に際し、ソフトウェアの検証に時間を要している。未だ不完全な部分が残っている懸念がある。そのため、三体間相互作用の導入に予定よりも時間を要している。このため、研究発表に値する成果を充分にまとめられていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
フトウェアの検証は継続する。一方で、ソフトウェアの不具合はシミュレーションを実施して検証する必要もあるため、導入した三体間相互作用を適用し、可変変数の最適化の作業も並行して進める。 また、シミュレーションでガラス構造を得るには、さらに融体を徐冷するシミュレーションを経る必要がある。これには計算時間をかなり要するので、可変変数の最適化はまず融体の構造で検証し、その後冷却後のガラス状態で再検証することを想定している。さらに、融体状態とガラス状態の差異を検証し、ガラス状態で最適な変数セットの探索を融体を用いて可能とするアイデアがないか、検証したいと考えている。 本研究では、ホウケイ酸塩融体/ガラスを最終的な研究対象に掲げている。その基本組成の1つであるアルカリホウ酸塩融体/ガラスは、ホウ素の配位数変化に特徴があるため、十分な再現性を確保したいと考えている。一方で、もう一つの基本組成であるアルカリケイ酸塩融体/ガラスについても、先行研究ではケイ酸塩ユニットの組成変化の再現性が低い問題がある。そこで、ケイ酸塩についても最適化に時間を要することが予想されるため、並行して検討を開始する。
|
Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響で学会等への出張が不可能になったため、予定の使途金が余ることになった。次年度の予算と合わせて適切に使用する。
|
Research Products
(3 results)