2020 Fiscal Year Research-status Report
キレート剤による生体内アクチニド除染メカニズムの解明と効率的排出
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20K05391
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
上原 章寛 (糟野章寛) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線障害治療研究部, 主任研究員(定常) (30402952)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクチニド / キレート剤 / 除染 / 生体内配位子 / XAS |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力発電所の使用済み核燃料に含まれるウラン・プルトニウムをはじめとするアクチニド元素は、放射線毒性のみならず化学的毒性も極めて高い。したがって、東京電力福島第一原子力発電所での除染作業を行う作業員の内部被ばくを予防するとともに万が一、内部被ばくした時の線量評価および体内の除染法も予め検討しておくべき課題である。 本研究では、キレート剤共存下におけるアクチニドイオンと生体内配位子の結合安定性メカニズムを、平衡論および速度論パラメータで分類して生化学実験、分光学実験を行うことで、キレート剤によるアクチニド除染に及ぼす影響を定量化する。 本年度は、文献あるいは測定によって求めた定数を用いて溶液内での平衡濃度計算を行い、実験結果の妥当性を評価するとともにキレート剤による結合の強さをデータベース化し、実験に用いる除染剤キレートして供した。次にアクチニドイオンと除染剤キレートにより生成した化合物は、X線吸収分光(XAS)測定により構造解析を行った。XAS測定では、原子価や化学構造によって明確にスペクトルが異なるので化学種の同定および定量が可能である。SPring-8にてアクチニド模擬元素を用いた実験を開始し、測定法や検出感度について実施の可能性を確認した。得られた成果を本年度の国内学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は核燃料物質使用施設の廃止措置作業が実施される年であったため、核燃料物質の使用期間が制限されたものの、おおむね順調に進展した。また、コロナ禍で、事業所-放射光施設間の移動及び放射光施設内での感染対策を十分行ったうえで実施することが出来た。試薬などの消耗品などの流通についても納期が遅れるなど懸念していたため、早めの発注を心がけた。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットから血液および尿を採取し、アクチニドと混合、インキュベーションしたのち、生体内配位子との結合安定性評価をXASスペクトルを測定することにより行う。元素濃度依存性を確認したのち、選定した除染剤キレートを添加することでアクチニドと除染剤キレートとの結合安定性評価を行う。一方、血清より等電点電気泳動、2次元電気泳動、透析膜等を用いた生化学実験により、アクチニドと結合する生体内配位子の速度論的な情報を取得する。
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Causes of Carryover |
本申請で計上していた分光装置が、申請中に入手できたので、当該助成金が生じた。本助成金は翌年度分として請求した助成金と合わせて、ウランを用いた放射光実験を行うための分光セル、実験試薬および旅費等に使用する。
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Research Products
(2 results)