2020 Fiscal Year Research-status Report
露頭画像の深層学習による二酸化炭素貯留層の地質不均質性の再現と数値化
Project/Area Number |
20K05396
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
千代延 俊 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (40526430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間所 洋和 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (10373218)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CCS / 二酸化炭素貯留層 / 砂岩 / 地質モデル / ドローン / 機械学習 / 深層学習 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
火力発電所などの二酸化炭素(CO2)の大規模排出源からのCO2の回収および地下への貯留(CCS)は,即効性かつ実現性のある地球温暖化ガス削減技術として位置づけられている。しかしながら,CO2の確実な地下固定という命題に対して,貯留層の地層不均質性については十分な知見が得られてこなかった。そのため,令和2年度は本研究課題において秋田県男鹿半島に露出する北浦層の大規模露頭におけるドローンによる超高精細画像の取得と露頭に認められる岩石の特徴による画像解析,露頭からの岩石採取によるアナログ的な地質情報の拡充を目指して各種データの採取に注力した。なお,秋田県に分布する北浦層は秋田県沿岸の地下に広く,厚く存在し,秋田県内に存在する油・ガス田の貯留層であるとともに二酸化炭素貯留層としても有望視されている。 令和2年度は,この大規模露頭からの定量的な岩石試料採取による岩石物性(孔隙率・粒子の淘汰度)の拡充,およびドローンによる露頭全体の近接撮影を実施して,岩石の色に注目した貯留層の不均質性を検討した。また,一部の画像を用いた岩石露頭のセグメンテーション化を行い,CPNを用いた機械学習を行うことで岩石物性分布の自動解析を試行した。その結果,機械学習における露頭情報の数値化においては良好な結果が得られ,一部の結果を学会発表するとともに,研究代表者と分担者による国際誌への投稿も実施し,査読結果を待っている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究では,露頭での地質情報の拡充するべく,砂岩/泥岩露頭からの試料採取方法を確立するとともに,実際の試料採取に着手した。採取にあたっては,砂岩層全体の岩石物性を明らかにする目的で等間隔の定量的採取を実施した。採取された試料は,本研究課題において購入した岩石密度測定天秤を使用して,岩石試料の飽和重量および乾燥重量,同体積を測定し,孔隙率の測定を行った。その結果,測定試料数は初年度で合計92試料となった。 また,ドローンによる露頭の近接撮影を改めて実施して,露頭全体の状況の再確認および新たな長近接画像の確認を行った。その画像に対して,従来から用いられてきた方法による機械学習および深層学習を適応して,岩石物性分布の数値モデル化実験を進めている。機械学習における露頭情報の数値化実験では,岩石の色に明瞭な違いが肉眼で認められており,画像解析においても良好な結果が予測された。岩石層準の堆積物の模様および色,コントラストに注目してCPNを用いた機械学習と画像解析は,色による岩相の不均質性を概ね表現できるに至った。一方で,画像の影や露頭表面の亀裂や岩色の近似部などに一部誤った判定が認められ,セグメンテーションの精度に大きく影響していることが考えられた。これらの成果は2件の国内学会発表を行うとともに,2件の学会へ投稿を行うとともに,1件については国際誌に投稿中である。 以上の発表からは,CCSにおける二酸化炭素貯留層のモデル化へ向けた地質アナログを用いた深層学習は,想定以上に計画が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,R2年度の成果を踏まえて,露頭からの間隙率や分級度といった地質情報のさらなる拡充を図るとともに,浸透率に関しても情報が得られないか検討を進める。浸透率が測定可能となることにより,地質モデルに必要な岩石物性が充実するとともに,より精度の高い数値計算が可能となる。 また,R2年度に実施したCPNを用いた機械学習と画像解析は色による岩石の不均質性と側方変化を表現することができたが,影や自然光のコントラストにより一部誤った判定が認められた。露頭における貯留層の岩石性状は堆積物の堆積様式と密接な関連性があることから,R3年度では堆積物の色だけでなく露頭表面の質感などを学習・判別可能となるか,LiDARや赤外線装置を用いた撮影と教師・学習データの構築を進める。また,従来の機械学習だけで無く,深層学習に関しても検討を進めてることにより,露頭全体の貯留岩性状の把握に努める。
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Causes of Carryover |
R2年度は新型コロナウィルスによる国際会議の中止により,海外渡航費が未使用となった。R3年度に国際会議が開催された際には,翌年度分として請求した助成金と併せて使用する予定である。
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