2020 Fiscal Year Research-status Report
アコPGMの溶媒抽出とPGM資源循環基本プロセスの構築
Project/Area Number |
20K05401
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
新苗 正和 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (50228128)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PGMs / 第一スズ / 塩化物水溶液 / 溶媒抽出法 / 資源循環プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
抽出剤として、希釈した陰イオン交換型抽出剤の2-エチルヘキシルシルアミン(EHA、一級アミン)、ジオクチルアミン(DOA、二級アミン)、トリ-n-オクチルアミン(TOA、三級アミン)及びトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMAC、四級アンモニウム塩)を使用し、PGMs(白金族金属)であるロジウム及びルテニウムの抽出と塩酸濃度の関係について検討を実施した。その結果、ロジウム及びルテニウムの抽出性は、EHAが最も高いことが分かった。特に、ルテニウムに対しては、塩酸濃度3M以上で100%近い抽出率が得られた。しかし、鉱酸等を使用してもほとんど逆抽出できないことが分かった。また、塩酸水溶液にスズ(II)を添加することですべての抽出剤でロジウム及びルテニウムの抽出性が改善できること、特に、ロジウムに対してはモル比で1以上のスズ(II)を添加することで高い抽出性が得られた。一方、ルテニウムはスズ(II)をモル比で20程度添加しないと高い抽出性が得られないことが分かった。さらに、ロジウムはスズ(II)を含むクロロ錯体を比較的短時間で形成するが、ルテニウムはスズ(II)を含むクロロ錯体を形成するのに非常に長時間を要することが分かった。また、不飽和炭化水素であるケロシンと芳香族炭化水素であるベンゼンの2種類の希釈剤を使用して、スズ(II)添加系と非添加系でロジウム及びルテニウムの抽出性を比較検討した結果、ロジウムの抽出に対しては顕著な差異は見られなかったが、ルテニウムの抽出に対しては、ケロシンの方が高い抽出性を示すことが分かった。また、ベンゼンで希釈したTOAまたはTOMACを使用すれば、スズ(II)をロジウムまたはルテニウムに対してモル比5程度を添加することで、ロジウムをルテニウムと分離して抽出できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、不飽和炭化水素であるケロシンで希釈した2-エチルヘキシルシルアミン(EHA、一級アミン)、ジオクチルアミン(DOA、二級アミン)、トリ-n-オクチルアミン(TOA、三級アミン)及びトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMAC、四級アンモニウム塩)の4種類の抽出剤を使用して、塩酸水溶液及びスズ(II)添加塩化物水溶液からのロジウム及びルテニウムの抽出性を検討し、ロジウム及びルテニウムの分離性について検討する予定であった。スズ(II)を添加した場合、ロジウムに比較してルテニウムがスズ(II)を含むクロロ錯体を形成するのに長時間を要し、ロジウムに比べて抽出性が劣ることが分かった。しかし、ケロシンに加えて当初予定していなかった芳香族炭化水素であるベンゼンを希釈剤とした2種類の希釈剤を用いて、希釈剤がロジウム及びルテニウムの抽出性に与える影響を検討することができた。その結果、ケロシンで希釈した場合と比較して、ベンゼンで希釈したTOAまたはTOMACを有機相とすること及び先に述べたルテニウムのスズ(II)を含むクロロ錯体の形成反応速度が遅い現象を利用することで、ロジウムをルテニウムに対して優先的に抽出し、両元素を効率的に分離できる可能性を示すことができた。このように、研究はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の検討結果を踏まえて、ベンゼンを希釈剤としたトリ-n-オクチルアミン(TOA、三級アミン)及びトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMAC、四級アンモニウム塩)によるロジウム-ルテニウム-スズ(II)混合塩化物水溶液からのロジウム及びルテニウムの相互分離について詳細に検討する。さらに、有機相に抽出したロジウム、ルテニウム及びスズの硝酸、硫酸などの鉱酸及びロジウム及びルテニウムと錯体を形成する亜硝酸イオンなどを含む酸性及び塩基性の水溶液による逆抽出について検討を実施する予定である。特に塩基性水溶液の使用では、スズを固相として、一方、ロジウム及びルテニウムを水相に錯イオンとして逆抽出できる可能性があり、逆抽出でのロジウム、ルテニウムとスズとの相互分離を検討する。また、貴金属含有廃棄物などからのロジウム及びルテニウムの資源循環基本システムを構築するために、その前処理プロセスとして、PGMs(白金族金属)である白金(Pt)およびパラジウム(Pd)に加えて金(Au)の効率的な回収方法についても検討する。
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Causes of Carryover |
COVID-19によるコロナ禍の中、当初予定していた出張が中止になり、そのため予定していた旅費を使用することができなかったこと、研究が無駄なく順調に進んだことで、試薬等に係る消耗品の消費量を抑えることができたこと、及び、令和3年度には消耗品であるが高価なロジウム及びルテニウムの関連試薬だけでなく金、白金及びパラジウム関連試薬を使用する予定であるため、その予算が必要になることから、次年度に繰り越した。
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